もともと自民もしくは自公優勢が伝えられていた参院選は、安倍晋三元総理の思わぬ逝去に「弔い合戦」の様相も加わって、自民単独で改選過半数を制するという自民圧勝に終わった。ではタレント候補はその中で、どのように闘い、どんな結果をもたらしたのか。
「選挙区は衆院選同様、その人の人気と実力が問われますが、支持する党名もしくは候補者の名前を書く非拘束名簿式の比例区では、候補者の人気と実力が自らの当選を引き寄せると同時に、党の議席獲得数への貢献にもなります。比例区では100万票が1議席獲得の目安で、例えば01年の参院選に自民から出馬した舛添要一さんは個人で約158万票を獲得して、1人だけで1議席獲得以上を自民党にもたらしました。なので比例ではタレント候補の集票力に期待がかけられます」(全国紙記者)
そこで今回の参院選を振り返れば、昨年10月の衆院選で大きく躍進した日本維新の会は、今回は「野党第1党の獲得」を目標に、タレント候補擁立戦術に出たと言える。新人の著名人候補として、青島健太(元プロ野球選手)、猪瀬直樹(元東京都知事)、神谷ゆり(気象予報士)、中条きよし(歌手・俳優)、松野明美(マラソン元五輪代表)と5人の候補を立てた。他党は比例の新人で全国的な知名度のあるタレント候補はせいぜい1人か2人。彼らの集票にかけた。
そして結果は、維新は比例で8議席を獲得して公明の6議席を上回り、確かに狙いは当たった。ただ最終的には立民の17議席に対して維新は12議席と、躍進はしたものの野党第1党には届かず。そして中身を詳しく見れば、タレント候補は自らの議席は獲得したものの「党への貢献度」ではじつは低かった。
「自民党で漫画家の赤松健さんは約52万8000票を獲得し、自民の政党名票を除く比例得票の11.6%を占めました。一方、維新のタレント候補を見ると、神谷さん以外は全員当選したものの、その中でトップ当選の松野明美さんで約5万5000票、党の政党名票を除いた比例得票の7.3%に過ぎません。れいわの水道橋博士氏は11万8000票弱の得票で同48.1%、NHK党のガーシーこと東谷義和さんは28万8000票弱で同68.7%と堂々の数字。維新全体を見ると、党の集票力があるために個人票の多いタレント候補から当選しているといった構造。話が逆になっています」(同)
その点では非常に惜しかったのが、1議席を獲得して驚きを与えた参政党だ。党で178万票弱の獲得だったので、2議席獲得まであと一歩だった。参政党の比例2位で落選した、さんまの「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)で有名になった学者の武田邦彦氏は約12万8000票の得票で同32.2%と、1議席獲得に大きく貢献している。
以上を見ればやはりタレント候補は効果をもたらすと言えるだろう。そういう意味では維新の場合は、結局は地方色を拭い去れていないということなのかもしれない。
(猫間滋)