「news zero」でラグビーW杯の都市伝説が流布された!?

 9月20日に開幕する「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」に向け、放送権を持つ日本テレビが猛アピールを続けている。開幕100日前の6月12日にはカウントダウンクロックのお披露目イベントが開催され、W杯応援団長を務める舘ひろしやスペシャルサポーターの櫻井翔が登場。その様子を同日夜の報道番組「news zero」でも詳しく伝えていた。

 その「news zero」では、ワールドカップの優勝国に贈られるウェブ・エリス杯をスタジオで披露。同杯には優勝メンバーしか触れてはいけないそうで、メインキャスターの有働由美子アナが「じゃあどうやって持ってきたの?」と疑問を呈すると、スポーツ担当の山本紘之アナは手袋をはめればよく、素手で触ってはいけないと説明していた。

 そのやり取りの中で、山本アナの口からラグビーについて誤った認識による説明がなされたというのだ。スポーツライターが指摘する。

「優勝杯に名を残すウェブ・エリスは、ラグビーの発明者として知られる実在の人物。ここで山本アナは、”サッカーの試合中にエリス少年がボールを持って走り出したことがラグビーの始まり”といった趣旨の説明を行いました。この言葉に多くのスポーツファンが《そんな都市伝説を未だに信じているの!?》と驚かされたのです」

 ただ、この説明に続けて山本アナは「諸説あります」と付け加えており、そこまで突っ込まれることではないだろう。だが前出のスポーツライターはこう続ける。

「いやいや、エリス少年の逸話自体は1823年の出来事として伝えられており、専門書にも載っています。ここで問題なのは山本アナが『サッカーの試合中』と説明したことにあります。ラグビー校の生徒だったエリス少年が試合中にボールを持った1823年にはそもそも、サッカーという競技自体が存在していませんでした。それゆえ山本アナの説明は史実に反していますし、ラグビーに関して『サッカーから分かれてできた競技』という誤ったイメージを植え付ける恐れがあるのです」

 1823年当時、イングランドでプレーされていたのは「フットボール」であり、スポーツ史では“原始フットボール”と呼ばれている。それゆえエリス少年の逸話は「フットボールの試合中」と説明するのがスポーツ界での常識。それが「サッカーの試合中」と伝えられているのは、スポーツに疎い翻訳者が「イギリスではフットボールはサッカーのこと」という思い込みから誤訳したことが原因なのである。

「サッカーという競技は、1863年のフットボール・アソシエーション(現・イングランド協会)結成により成立しました。その結成時にラグビー校など“ボールを手で持つ派”が離反し、ラグビーユニオンを結成。だからラグビーはサッカーから分岐したのではなく、最初から二派に分かれていたのです。そして“アソシエーション”(協会)から派生してできた単語がサッカーですから、エリス少年の時代にサッカーが存在するはずもありません。ラグビーワールドカップを放送する日本テレビには、そうした基本的な部分を間違えてほしくなかったですね」(前出・スポーツライター)

 せっかくの日本開催、正しい情報で盛り上げてもらいたいものだ。

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