プーチン「国民洗脳」の恐怖現場【1】“ロシアの田原総一朗”が討論番組で…

 支持率、実に83%。世界からの逆風が吹くロシアのプーチン大統領だが、国内では圧倒的に応援する国民が多いのも事実だ。その裏には恐るべき「悪魔の国民洗脳」があるという‥‥。

 ロシアの独立系調査会社によれば、ロシアによるウクライナ侵攻後のプーチン大統領の支持率は、戦前よりも10ポイント以上アップ。00年の大統領就任以降、最も高い支持率をマークしたという。外信部記者が語る。

「ロシア政府は一貫して、今回のウクライナ侵攻は戦争ではなく『特別軍事作戦』であることを強調。ニュースでも『戦争』のワードを口にするだけで、政府からの検閲が入るという有様です。しかもロシアは、ウクライナ政府が『ナチスによって乗っ取られている』と主張。以前からプーチン大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領を名指しして『ナチスだ』と主張していた。その発言を踏襲するものです。さらに、ウクライナで活動していたナチスが、ロシアとウクライナ国境近くで、欧米からの支援を受けてロシアへの軍事活動の準備をしていたと指摘。その危機を取り除くためにロシア軍を展開したと正当化しています。もちろん、ニュース映像もすべてチェック済み。ウクライナ人が悲しむ様子は、すべてフェイクニュース扱い。街が爆撃で破壊されていても『ウクライナ軍が一般市民に手を出した』として放送するなど、やりたい放題で、捏造と隠蔽のオンパレードです」

 つまり、欧米の支援を受けたウクライナ政府はナチスの傀儡であり、国内で虐殺を繰り広げるウクライナの狼藉をストップするためにロシア軍が立ち上がった、というのがロシア政府の公的な言い分なのだ。この「悪魔の国民洗脳」による主張が連日、報道されるばかりか、国威発揚のキャンペーンとして「Zマーク」が街の看板や道路標識にも採用。Tシャツも販売されるほどだ。目下、反ロシアを口にできない厳しい同調圧力が支配している。これでは新聞やテレビでウクライナ侵攻のニュースを知る一般のロシア市民が、プーチンを支持するのも無理からぬことかもしれない。それどころか、ロシア政府は一連の軍事活動の背景には「欧米によるロシア侵略の野心がある」として、徹底抗戦を呼びかけているというのだ。

「今回の特別軍事作戦の大義として、ウクライナの問題だけでなく、『欧米はロシアの豊富な天然資源、とりわけ石油の権益を獲ろうとしている。それを防ぐためには国民は耐えがたきを忍ばなければならない』と報じています。特に旧ソ連時代を知る年輩のロシア国民は、長い間の貧窮生活に慣れているばかりか、反欧米思想が今も強く根付いていて、自給自足も辞さないほど熱狂的にプーチンを支持しています」(国際ジャーナリスト)

 ロシア国内におけるプーチン人気を支えているのは、日々のニュースにとどまらない。人気の討論番組でも「隠れプーチン派」が暗躍。世論操作が行われているのだ。ロシア出身の元留学生が語る。

「ロシアに住んでいる一般人にとって最も人気なのが『チャンネル1』の討論番組『ボルシャヤイグラ(英語で『ビッグゲーム』の意味)」です。この番組の影響力はハンパなく大きくて、ロシアの世論を左右するとさえ言われている。番組自体はクセの強い文化人が出てきて政治問題について激論する、いわば『ロシア版・朝まで生テレビ』。ホストを務めるのがさしずめ『ロシアの田原総一朗』とも言うべきバチェスラフ・ニコノフという人物です。スターリン政権下の外務大臣の孫として有名です。ゲストもロシア政府とズブズブの人間ばかりで、プーチンに都合の悪い話は絶対にしない。これがプーチン人気を陰で支えています」

 KGB出身のプーチンにとっては、世論操作もお手のものだろう。

*「週刊アサヒ芸能」4月14日号より。【2】につづく

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