日本ダービーが大波乱の結末に終わり、新馬戦がスタートした。注目すべきはなんといっても、今年産駒を出す新種牡馬である。なにしろ、7年連続でリーディングサイアーの座を守ってきたあの大種牡馬が、突然の休養。新馬戦の舞台がとりもなおさず、「後継馬」レースの行方を占う場となっているのだ。
12番人気で日本ダービーを制したロジャーバローズの父はディープインパクト。これがディープ産駒5頭目のダービー馬だった。
が、競馬ファンが周知のように、大種牡馬ディープインパクトは体調不良のため、3月末で年内の種付けを中止。現在は痛みを発症した首や腰の治療に専念している。
繋養先の社台スタリオンステーション側は、大事をとっての中止と軽症をアピールするが、「原因を追究して来年に備えます」と言っているのが気にかかる。というのも、1歳上のキングカメハメハが昨年、免疫低下によって種牡馬引退を余儀なくされているからだ。免疫低下の原因は明らかにされていないが、加齢(老化)によるものとみられている。社台スタリオンの二枚看板の一角にそうした事態が起きたばかりゆえ、不安視する声が出るのもしかたのないこと。さる生産者によれば、
「種付け時に立ち上がるとフラつくというから、腰の具合がよくないのは明らか。ディープもすでに17歳と高齢なので、楽観視はできませんね。たとえ腰の具合が改善されたとしても、これまでのように、年間200頭以上の牝馬に種付けするのはまず無理でしょう」
ディープインパクトが今年種付けしたのは、二十数頭。予定していた残りの牝馬は他の種牡馬に回されることになった。種付け料は4000万円といわれるが、それに匹敵するサンデー系種牡馬はいないため(ハーツクライで800万円)、社台スタリオンにとって大きな損失となったことだろう。
「種付け牝馬の中にはシンジケート会員のものもいたり、病気に対する保険金が下りたりもすると思われます。あるいは種付けに失敗して生まれないケースもだいたい数十頭はあるでしょうから、100頭前後に種付けできなかったと計算すると、損失額はざっと約40億円に上ることになりますが‥‥」(生産者)
7年連続リーディングサイアーのリタイアに伴って浮上したのが、「ポスト・ディープインパクト」の話題である。ディープ産駒の新馬が20頭ほどしか登場しない3年後には、ステイゴールドやキングカメハメハの産駒もほとんど見ることがなくなる。そうした意味でも今、種牡馬の絶倫レースが大きな転換期を迎えていると言えよう。
時代を担ってきた種牡馬はサイヤーラインを継続させるためにも、後継馬作りが欠かせない。だが、王者・ディープインパクトの後継種牡馬の顔ぶれを見ると、ディープブリランテ、トーセンホマレボシ、トーセンラー、ダノンバラード‥‥と、どうも頼りないのが現状なのだ。