大阪市のコロナ入力“1.2万人漏れ”に呆れる声「なぜFAX?」「アナログすぎ」

 行政が新型コロナ陽性者数などを把握するため必要不可欠なのが、医療機関から保健所に送られてくる「発生届」だ。保健所では、この「発生届」に基づいて、職員が国の情報管理システムである「ハーシス」にデータを打ち込み、入力が済んだ時点ではじめて患者数などを行政が把握することになる。

 ところが、大阪市保健所において1月下旬以降、1日200件から最大で3000件、合計1万2700件の発生届が反映されていないことが発覚。大阪府が毎日公表する新規陽性者数から、その数が漏れていたことが明らかになった。

「入力漏れが起こった原因のひとつには、大阪市における新規陽性者数が想定を超えたことがあげられます。大阪市では当初、1日あたりの新規陽性者数を1700人程度と想定、その態勢で臨んできました。ところが、1日の感染者が連日3000人を超えたことで、処理能力が追い付かなくなってしまった。しかも、そんな時に限って国の情報管理システムであるハーシスで、入力時に画面が固まってしまうなどの不具合が発生、夜になってからでないと入力できない日が続いたようです」(全国紙社会部記者)

 そしてもうひとつ、最大の要因となったのが、医療機関から送付されてくるFAXによる発生届があまりにも多く、職員がその対応に追われたことにあるという。記者が続ける。

「発生届には感染者の氏名に症状、基礎疾患の有無など19項目の記載欄があり、医療機関がそれらのデータを直接ハーシスに入力するか、保健所にFAXが送られ職員が入力するケースがあります。大阪市保健所では、まだ6割の発生届がFAXで送付されているといいます。しかも、個人情報の誤送信を恐れて一部の項目が黒塗りにされているものや、文字がつぶれているなど不鮮明のものも少なくないとか。そうなると結局、保健所の職員が発信元に電話をかけ、内容を聞き取る必要が出てきますからね。今回集計から漏れた分は、すべてファクスによる届け出だったそうです」

 コロナの正体がよくわからなかった第1波、第2波の時ならいざ知らず、パンデミックが始まってからすでに2年。にもかかわらず、相も変らぬアナログ手法に対しSNS上では、《ダメだなこりゃ、いまだにFAXって昭和かよ? アナログを放置したツケだよ》《なんのためにデジタル庁を作ったのかをもう一度考えるべき》《マンパワー不足で苦しんだ波あったのに、その反省して補充する時間なかったの?命を救う為にワクチン接種をしよう、社会を犠牲にしよう。把握できていない案件が一万人超えてて、どうやって命救おうと言えるのでしょうか》といった驚きと怒りの声が続出している。

 大阪市では再三医療機関に協力を求めているが、医療現場ではいまだに「手書きなら診察の合間にも手早く処理できる」という声が多く、松井一郎市長も「医療機関にこれ以上の負担をお願いするわけにもいかない」と頭を悩ませているようだ。そもそも、そんな面倒臭いシステムを導入したことこそ、問題のような気もするが。

(灯倫太郎)

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