デジタル人民元が華々しく国際デビューの陰で本家・メタの「ディエム」がひっそり撤退

 ついに2月4日から北京オリンピックが始まる。正直、冬季五輪は中国はあまり強くないということもあって、コロナ感染の厳戒態勢下での開催は、いかに中国がハイテクでこれに打ち勝ったかをアピールできるという面ではむしろ好都合なのかもしれない。

「北京オリンピックでは東京大会と同様の『バブル方式』が採用され、大会運営に係るスタッフはスマホのアプリで厳格に健康を管理、食事はなるべく人を介さないようにロボットが調理し、配膳も天井を通じて運ばれたものが上からアームで下ろされるといったように、全自動で行われます。そして選手の移動など会場内では水素エネルギーバスが走行し…と、ハイテク端末、AI・ロボットを用いたオートメーションシステム、環境へ配慮した技術が駆使され、万博ならぬ中国博覧会とでもいうような大会になりそうです」(経済ジャーナリスト)

 その中でも特に注目すべきは「デジタル人民元」だ。中国ではオリンピックの開催に合わせて年初からデジタル人民元のアプリが開放され、国外から訪れる選手、報道、その他関係者の外国人用にiOSやAndroidのアプリストアでもダウンロードできるようにした。ファーウェイやシャオミといった中国国内のスマホのアプリストアを通じたダウンロード数は1月末で既に3000万回を超えているという。晴れの舞台で、デジタル人民元もお披露目というわけだ。

 一方、これとほぼ全く同じ時期に皮肉な出来事があった。デジタル通貨ではもともとは言い出しっぺの本家となるはずだったメタが、デジタル通貨から撤退するという発表があったのだ。メタはまだ社名がフェイスブックだった19年にデジタル通貨の「リブラ」の運営に乗り出すと発表して世界中で大きなニュースとなった。ただその後、規制当局の反対などもあって話は急すぼみ。「ディエム」と名前を変えて実現を模索していたが、1月いっぱいでの撤退が決まった。結果、中国としてはデジタル通貨先進国のお株を奪ったようなものだ。

 ところでメタと言えば、これもイチ早く「メタバース」の本格実現を昨年に打ち出したばかり。現状では、メタバースはゲーム空間での普及が早く進むと見られ、内部の商取引では暗号資産が使われる、というのが大まかな未来予測だが。

「中国でもアリババやテンセントなどがメタバースに積極投資を行っていますが、中国国内ではゲーム業界に大きな規制を課したばかり。しかも暗号資産の使用に関してはこれを禁じていて、デジタル人民元など、既にあるデジタル決済しか認めないことになっています」(同)

 今回のオリンピックはデジタル人民元の汎用性での一大実験にもなるはずで、その先にある中国版メタバースがどういったものになるのかの試金石にもなるようだ。

(猫間滋)

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