北極圏で気温38度を記録!「年間気温差80度」の先にある“恐ろしい事態”とは

 気象変動による南北両極での温暖化に歯止めがかからない。

 国連の世界気象機関(WMO)が14日、2020年にロシアのシベリアで記録された摂氏38度の気温を、北極圏での観測史上最高に認定したと発表した。WMOによれば、気温38度は同年6月20日、ロシア極東サハ共和国の東部の町ベルホヤンスクで観測されたもの。昨年2月6日に、南極大陸の過去最高気温として認定された南極半島にあるアルゼンチンのエスペランサ観測基地での18.3度と合わせ、南北両極で最高気温の記録が更新されたことになった。

 気象問題に詳しい科学ジャーナリストによれば、北極圏で夏季に気温が高くなるのは珍しいことではないものの、ここ数年、毎年この時期に異常な高温が観測されていることから、専門家の多くが「世界平均の2倍の速さで北極圏の温暖化が進んでいる」として気象変動への警鐘を鳴らしているという。

 ベルホヤンスクは、人口1300人ほどが暮らす北極圏のすぐ内側に位置する、シベリアの遠隔地だが、

「つい先日(12日)も、同じサハ共和国で、氷点下47度のなかでの『寒中沐浴』がニュースで報じられましたが、ここの最低気温はなんと氷点下68度と恐ろしいほど低く、1月の平均最低気温は氷点下42度。逆に、6月には20度に上昇するなど、温度差が激しい地域として知られています。最高気温38度となると、1月の平均気温氷点下42度との温度差はなんと80度。北極圏の海水温は上がり続けており、このままだと海氷の消失など、さまざまな弊害が起こります」(同ジャーナリスト)

 北極圏における温暖化による弊害のひとつは、永久凍土の融解だ。永久凍土が溶けることにより、地下に閉じ込められていた二酸化炭素とメタンの放出が始まる。これら温室効果ガスの大量放出により、さらなる温暖化と永久凍土の融解という、悪循環を引き起こすというのだ。

「さらに、日射に対する反射率が高い白い氷が失われることで、陸や海がより多くの熱を吸収、それが山火事の原因になる。通常、北極圏での山火事は5月初旬に始まり、7月と8月にピークを迎えるのですが、昨年、シベリアのクラスノヤルスク地方では山火事の発生件数と被害面積が過去最大になっていたことが、ロシアの非常事態相によって報告されています。さらに、永久凍土には人類がまだ知らない未知のウイルスが眠っており、温暖化で凍土が溶け出すことにより未知のウイルスが現れ、世界中に感染を引き起こす、という説を唱える科学者もいますからね。そうならないためにも、これ以上の温暖化は、なんとしても食い止めなければならない。地球規模で取り組むべき最重要課題です」(同)

 ロシアでは永久凍土が溶解し、CO2の100倍に上る気温上昇効果を持つメタンや、太古の動物の死骸から発生する猛毒の炭素菌が大気に放出され始めている、との報告もあるが、南北両極での最高気温更新の先にあるものとは……。

(灯倫太郎)

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