世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「阪神の抑えにドンピシャの男とは」

 阪神にとっては激痛のニュースになった。守護神のスアレスが退団、メジャーのパドレス入りが決まったからだ。今年は両リーグ最多の42セーブで、防御率は1.16。相手チームも、スアレスが出てくるとお手上げムードになっていたし、わずか1点リードの状況でも安心して見ていられた。12球団ナンバーワンのストッパーだっただけに、来年こそリーグ優勝を目指す矢野監督にとってアタマが痛いところや。

 代役候補を探すといっても簡単に見つかるわけがない。今年は広島の栗林が37セーブで防御率0.86の驚異的な成績を残したけど、新人があそこまでハマるなんてことはほとんどありえないし、新外国人も当たり外れがあって何とも言えない。現有戦力では東京五輪にも選ばれたセットアッパーの岩崎か、来年が高卒3年目の及川が候補となる。今年の投球を見ていると、疲れが出てきた時にどうか。2人とも球速よりキレで勝負するタイプの投手だけに、特に疲れのたまる夏場はきつくなるはずや。

 空振りを奪える球の力だけで考えると、阪神で最も適性があるのは藤浪なんやけどな。でも今年は開幕投手を任せられながら、結局、先発ローテに定着できずに3勝止まりやった。ここ数年、言い続けていることやけど、ほんまにもったいない。160キロのストレートを投げられるんやから、ストライクに困らないコントロールさえあれば、簡単に抑えられるはず。それが1球でも抜け球が出ると、その後はストライクを取ることさえ難しくなる。投げてみないと分からないタイプやし、ベンチからすると、抑えでの起用には相当な勇気がいる。

 藤浪も来年が節目のプロ入り10年目、もう後がない。「先発がいい」と言ってる場合ではないし、野球人生を懸けて勝負しなアカン。抜け球を怖がって右打者の内角に投げられなくなっているけど、ぶつけても仕方がないぐらいに開き直ってほしい。潜在能力を覚醒させれば、それこそ球界を代表するストッパーになれる。

 でも、阪神の抑え投手はとにかくメンタルが相当強くないと務まらない。負けた次の日は新聞やネットでボロクソに叩かれる。ファンだけでなく、白星を消した同僚への申しわけなさもある。そんなことを考えると、しがらみのない外国人のほうが向いているのかもしれん。日本一になったヤクルトのマクガフなんか、打たれても「こんな日もあるわ」ぐらいの表情で、ガムをかみながら平然と引き揚げていた。

 今年、5年連続の日本一を目指したソフトバンクがBクラスに転落したのは、守護神の森が精彩を欠いたのが大きな要因やった。巨人も、9月4日の甲子園でビエイラが大山にサヨナラ逆転2ランを浴びて首位から陥落すると、シーズン終盤はリリーフ陣が崩壊してボロボロになった。9回に逆転負けを食らうと野手はガクッとくるし、特に失投や四球連発でやられれば、「何しとるねん」と思う。勝ち試合をきっちりと勝ちきってこそ、チーム全体のリズムが出てくる。

 阪神は近年、エースと4番に苦しんでいたけど、来年は勝ちパターンの確立が一番の懸案となりそう。スアレスと比較されることになる新ストッパーは、やりにくくて仕方がない。この窮地をどう乗りきるかが、捕手出身の矢野監督の腕の見せどころやな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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