11月22日はその語呂から「良い夫婦の日」なのだという。それを迎えるにあたって明治安田生命はブライダルの調査を実施、15日にその結果が公表されたのだが、業界内の人なら予測はできていたであろうが、ブライダル市場関係者を落胆させるに十分な数字だった。
新婚夫婦(結婚2年以内)の夫婦の実に58.8%が結婚式を挙げておらず、さらに新婚旅行に至っては68.8%の夫婦が行っていなかったというのだ。また行ったとしても、結婚式の費用は新婚でない夫婦(結婚2年超)が約247万円だったのに対し、新婚は約242万円と2万5000円の差が生じていて、新婚旅行では新婚約40万円・新婚でない約61万円で20万円もの差が生じていた。コロナ下なので当然、悪影響を及ぼすのは仕方がないことではあるが、いかに新たな人生の門出を祝うなどといった状況でなかったことがここから伺える。
「ブライダル業界にとっては織り込み済みの話とはいえ、彼らが今後気にかけているのは、結婚式を挙げることへのこだわりが習慣として薄れ、これを機に一気に結婚式の簡素化が進むことです。リクルートのブライダル総研が毎年行っている調査でも、それまでは350万円超で推移していた結婚式の平均額が21年調査では300万円を切っています。20年度の結婚式場の倒産(負債額1000万円以上)は9件ありました」(経済ジャーナリスト)
中でも大きな衝撃だったのが3月のワタベウェディングの経営破綻だ。同社は海外ウェディングの先駆けだったのだが、結局「コルゲンコーワ」などでお馴染みの興和(略称・コーワ)のグループ下に収められた。また、最近では10月に沖縄の地元で親しまれた結婚式場が県内初の倒産となった。
1980年代には1000万円を超える費用をかけた「派手婚」なるものが流行したものだが、近年はムダを省いた「地味婚」が増加。もともと少子高齢化、日本人の所得の伸び悩み、派手婚を嫌う風潮などでブライダル業界のパイは縮小していた。
葬式もかなりダウンサイジング化が進んでいて、もはや冠婚葬祭に必要以上の金額をかけるのは稀。コロナ下に見合ったブライダルのオンライン化も慣れてみれば普通のものとなって、となると新たなサービスを掲げた新規参入の余地も増える。一方で図体が大きい既存の事業者は高コスト体質でさらに苦戦を強いられる。今後、多くの結婚式場から灯が消えるかもしれない。
(猫間滋)