元警察キャリアが「職務質問」のマル秘内幕を暴露【後編】徹底拒否すべきケースがあった

「例えば職質された人が落ち着いた対応をしているにもかかわらず、いきなり強引な物理的接触をしてきた、あるいはいきなり鞄を取り上げられた、開けられた、ポケットに手を突っ込まれた、というような場合。その職質は違法であると裁判所が認めてくれる可能性が高い。そうした際には自らの権利を守るため、徹底拒否、徹底抗戦すべきです」

 具体的手段としては、絶対に任意に協力しない・承諾しない旨を告げ、目撃者が期待できるなどの場合は、大いにアピールするべきだという。

「ただしその際は、できるだけ冷静に騒ぐこと。なぜなら、公務執行妨害の現行犯として逮捕されるリスクがあるからです。しかし、大声・悲鳴を上げることや警察官の違法性を訴えること、周囲に助けを求めることは一般に『実力行使』でも『脅迫』でもないでしょう。後々、いざ警察官の違法を問う裁判になった時などに、警察官がどれだけ無茶をしたのかという裁判所の判断に対し、有利に働くこともある。興奮するのではなく周囲に認知してもらうための目的として、あくまでも冷静に、ハッキリと、何をするのが自分を守れるのか意識して騒ぐ。職質は荒れる時は荒れるので時に困難なことですが、それが最善の対処法です」

 自転車による職質でよく行われる「防犯登録確認」の「ノルマ」が存在するかどうかについては、

「仮にそのような制度を設けた場合、警察官の誰もが自転車盗シフトをとってしまうという意味において、むしろ有害です。例えば、雨・嵐の日の実績管理はどうするのでしょう。バカな管理職がいないとは断言しませんが、私が職業的経験から判断するに、制度として合理性がない」

 では職質してきた警察官に対し「私に職務質問した法的根拠を教えてください」、つまり「私のどこに職質されるような異常な挙動、その他、周囲の事情があったのか」と聞くと、どうなるのか。そもそも聞いていいのか、心証を悪くしないか。

「職務質問をするからには警職法の求める不審性が絶対に必要ですから、例えばAさんを見つけ、Aさんに法律上の不審性があると判断したからこそ、その職務質問なるフィールドが形成されたわけです。となると、Aさんから『じゃあ、なぜ私はこのフィールドに留まらなければいけないのですか』と質問された時、『そんなことはいいから、所持品を出せ』というのはまともなやり方ではない。職務質問は戦術的な行為なので、戦術的な判断をする上で、いかにお互いが気持ちよく終わるかということなどを考えた時に、真っ当で平均的な警察官ならば1分未満となるであろう説明時間を惜しむことは愚かです。職質なるフィールドにおけるコミュニケーションの質は、警察官の側も意識して向上させる必要があるでしょう。月並みな言葉ですが、説明責任というのは職質の場面でも重要で、だからこそ月並みになる」

「路上の真剣勝負」とも呼ばれる職務質問。それは究極のコミュニケーションなのかもしれない。

*「週刊アサヒ芸能」11月25日号より

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