昨年7月に発生した令和2年7月豪雨で橋脚や線路の流失など甚大な被害が出た熊本のくま川鉄道。土砂が流入した人吉温泉駅は線路が水没し、全車両が浸水。さらに国の登録有形文化財だった球磨川第四橋梁は流失するなど壊滅的な被害を受けてしまった。
以来、全区間不通のままで代替輸送バスが運行。もともと営業赤字が約30年間続いていた第三セクターの地方ローカル線で、廃線という最悪のシナリオも考えられたが、乗客の大半を占める地元高校生にとっての通学の足という需要もあり、存続の道を選択。
そんな中、立ち上がったのが『くま川鉄道復旧支援プロジェクト』だ。クラウドファンディングや募金・寄付金、復旧祈願グッズの販売に多くの人が賛同。そうした支援の輪もさることながら、運行再開できた理由はこれだけではない。
「くま川鉄道の復旧には約46億円という莫大な金額が必要でしたが、国が定めた特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金が適用。これは線路などの設備や土地を自治体が保有し、無償提供を受けた鉄道事業者が運行・運営を担う上下分離方式の導入が条件となっています。その結果、多額の補助を受けられることになり、同社の負担が最小限に抑えられたんです」(鉄道ライター)
なお、運行再開は11月28日から。ただし、全区間の約4分の3にあたる肥後西村~湯前の18.9キロで、人吉温泉~肥後西村の5.9キロは橋梁流失の影響もあり再開時期は未定。この区間は今後も当面の間は、代行バスが運行される見通しだ(※運行は平日のみ)。
「でも、水害で不通になった区間をなんとか活用しようと生まれたモノもあります。特製自転車で線路の上を走行する『くまチャリ』は土日祝限定のアクティビティですが、利用者からは大変好評です。今年度は部分復旧に伴い、11月23日で終了になりますが、来年度も3月から再開の予定。普通のサイクリングとはひと味違って楽しいですよ」(同)
コロナの感染者数が減ったことで賑わいを見せている全国の行楽地。実際に現地を訪れて、くま鉄を応援してみるもよさそうだ。
(高島昌俊)