コロナ禍の逆境にあって勝ち組とされたファストファッション。とはいえ、人の流れが変わったのは現実で、既存のビジネスモデルの変換を迫られつつあるようだ。
無印良品は9月10日に新宿の「MUJI 新宿」「無印良品 新宿」を揃ってリニューアルさせた。特に新宿はコロナで人の流れが激減、そのことを受けて加えてポストコロナで新たなコンセプトを打ち出している。
「特に『MUJI 新宿』ではサスティナブル時代に合わせて環境問題を意識した店舗に生まれ変わっています。これまでもそうでしたが、服だけでなくアートをテーマに雑貨や家具に力を入れています。具体的には同社ブランドの『ReMUJI』で最大の売り場を確保、要らなくなったタオルやシーツを回収したものを染め直して新しい商品として売り出しました。その際、ほつれや破れがあるものはパッチワークの加工をするなどして、循環型社会でのファストファッションの1つの在り方を示そうとしています」(経済ジャーナリスト)
といったように、現在の様々なニーズを取り込む形で店舗を生まれ変わらせたわけだが、1番分かりやすい変化は、店舗前に自販機を5つ設置したことだろう。新宿の街をブラブラ歩いていたら一風変わった自販機が立ち並んでいるのだからイヤでも目につくというものだ。
さてその自販機、売られているのはアルミ缶に入った黒豆茶やミルクティーなど、これまでの無印良品でもお馴染みの飲食物のほか、女性用ストッキングやボクサーパンツ、不織布マスク、折り畳み傘など、急な用途で困った時に役に立つ商品などが目立つ。変わり種は「猫草栽培セット」だ。猫草はネコが毛づくろいなので飲み込んだ毛を体外に出すためのものだが、実は隠れたベストセラーだったという。ところが、無印良品ではペット専用コーナーがなかったのでお客がなかなか探し出せないでいたのだとか。だから敢えて人目に付く自販機に備え付けたのだという。同社ではこういった「お試し商品」を自販機に設置することで顧客のニーズを拾い上げる試みも行っていくようだ。
対するファストファッションの雄、ユニクロは9月17日にグローバル旗艦店である銀座店をリニューアルさせる。
「銀座店と言えば同社の顔と言っていい。その銀座店をリニューアルするわけですから、ポストコロナ時代で同社がどうブランド展開を行っていくかの試金石と言えるかもしれません。ブランドの哲学である『LifeWear』を体現した作品を設置するのはもちろん、スーツ専用サロンやカフェ、花売り場を設けるなど、こちらも服以外の『生活』の分野を拡充する予定です」(前出・ジャーナリスト)
それらのフロアには特別な研修を受けたスタッフを配置し、例えばスーツ専用サロンではフィッターが採寸を行い、オーダーメイド感覚で体にフィットしたスーツが購入できるようになるという。そして買い物に疲れたら最上階の12階のサロンで体を休めることができ、コラボする老舗洋菓子店『銀座ウエスト』のお菓子を頬張りながら、ユニクロ初のオリジナルコーヒーを楽しめるという。
また、同社ではライブ動画を見ながら気に入った商品を購入できるライブコマースを行ってきたが、これを銀座店にも導入。バーチャルとリアルを融合させた服選びが広い店舗を舞台に可能になる。
コロナとの共生がもはや前提となった今、ファストファッションは生活に密着している分、その中で新たな時代のニーズをいかに早くつかむかの勝負となりそうだ。
(猫間滋)