同僚選手への暴力行為で日本ハムから無期限出場停止処分を受け、わずか9日後に巨人へ電撃移籍。さらにその翌日からシレッと試合に出るや、異論の集中砲火を浴びる中田翔。素行もさることながら、両球団の独善的な結着の仕方は一般常識とかけ離れている。識者、球界関係者の「生怒声」をお届けする。
8月22日の対DeNA戦、移籍後初スタメンで5番に座った中田翔(32)が7回に迎えた第3打席。その初球だった。
3点ビハインドで、1アウト2塁の状況。マウンドの今永昇太(28)が投じた内角へのストレートを、思いきり引っ張る。高い弾道の放物線を描いたボールは、コロナ禍でほぼ無人のレフトスタンド上段に突き刺さった。巨人はさらに、続くウィーラー(34)が2者連続となる本塁打を放ち、敗色が漂う試合を引き分けに持ち込んだ。だがベンチ裏には五輪に続き、またしても〝あの人〟の姿が……。
「この日は長嶋茂雄終身名誉監督(85)が球場に現れ、試合前に中田を激励する動画が球団公式ユーチューブに公開されました。長嶋さんは『ジャイアンツが優勝できるように頑張って』と話し、中田とガッチリと握手。付き添った原辰徳監督(63)も『僕がミスターから教わったことをちゃんと教えます』と巨人流の指導を約束していました。翌朝のスポーツ紙では軒並み一面に、『御前試合』での本塁打が大きく取り上げられました」(球界関係者)
それはあたかも、ベンチ裏での暴力行為という中田の「罪」がこの一発で帳消しにされたかのようで、
〈長嶋さん大喜び!! 激励パワー「さすが。真の強打者」〉(サンケイスポーツ)
〈原監督「起死回生的」 ミスターの握手に「頑張れ」に燃えた〉(スポーツ報知)
〈「一生忘れない」移籍初安打〉(日刊スポーツ)
と称賛のオンパレード。挫折した選手が新天地で活躍する、という美しいストーリーだけがクローズアップされる事態になったのだ。
しかし、本当にそれでいいのか。長年プロ野球を見続ける漫画家のやくみつる氏も、現状に納得できない一人だ。
「美談仕立ての報道がなされて、そこに耳目が集中するたびに、まるで目くらましのようで『違うよな〜』と感じますね。結局、中田がなんでこうなったのか、何もわかっていないですから。暴力行為は、報じられているような小競り合いに近いものだとしたら、ハッキリ言って処分が重すぎます。かなり矮小化されて伝わっている気がしますね。ハムの球団職員に知り合いがいるという某芸人が『中田の移籍に関しては絶対に本当のことを言えない、と聞いた』と話していたそうですし、よほど強烈な緘口令が敷かれているんでしょう。アサ芸さんも、私のようなイチ野球ファンに意見を聞いてる場合じゃないですよ。実際に何が起きたか、じっくり調べてほしいところです」
中田は、8月16日時点で栗山英樹監督(60)が、
「(復帰まで)すごく時間がかかる。正直、このチームでは(プレーを続けるのが)難しいかな」
と語ったように、騒動発覚後の日本ハムではほぼ「クビ」の状態だった。つまり、やく氏がいぶかる通り、「一発退場」級の案件という可能性はなかったのか。
しかし日本ハムは、コトによっては刑事事件に発展したかもしれない経緯を公式に一切説明せず、トレードと同時に無期限出場停止処分を解除。それに巨人も歩調を合わせ、何事もなかったかのように出場させる。一般社会ではおよそ考えられないアキレた「ヤラセ」茶番劇である。
*「週刊アサヒ芸能」9月9日号より。(2)につづく