世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「金・侍ジャパンへダメ出しや!」

 侍ジャパンが東京五輪で悲願の金メダルを獲得した。感動したというより、「負けなくてよかったな」というのが正直な感想。プロ野球を中断してレベルの高い選手を選出。他国の戦力と比較すると、勝って当たり前の戦いやった。

 アメリカはメジャーの選手を一人も派遣せず、野手ではDeNAのオースティン、投手ではソフトバンクのマルティネスらNPB所属の選手と、マイナーリーグの選手との混合チームやった。日本の他に本気でメダルを目指した編成をしていたのは韓国ぐらい。その韓国にしても3位決定戦で逆転負けするなど、強さは感じなかった。

 侍ジャパンにはもっと楽に勝ってほしかったけど、接戦の重苦しい試合内容が多かった。日の丸を背負ってプレーすることのプレッシャーが見ているほうにも伝わってきた。ベンチの采配も重たかった。相手投手がクイックが全くできなくて、誰が走っても盗塁できるような状況でもマニュアルどおりの送りバントをする場面があった。

 冷や水を浴びせるわけではないけど、無駄なヘッドスライディングも目についた。準決勝の韓国戦では8回二死満塁で山田の勝ち越し適時二塁打で、一塁走者の甲斐がホームにヘッドスライディング。楽々セーフのタイミングで、頭から突っ込む意味がわからない。アナウンサーはそれを気迫あふれる走塁とほめたりするけど、そうではない。自分からケガをもらいにいっているようなもの。1次リーグのメキシコ戦では、同点の3回、浅村の投ゴロで三塁走者の坂本がヘッドスライディングで生還した。走塁の判断自体は素晴らしかったが、これも頭から滑る必要は全くない。

 僕ぐらいしか言う人がいないから、あえてしつこく言い続けたい。ヘッドスライディングは突き指や脱臼だけでなく、首の骨を折る可能性まであるんやから、絶対にやめたほうがいい。五輪の試合を見ていた子供たちに悪い影響を与えないかが心配。ヘッドスライディングを推奨するアホな指導者もおるけど、ケガした時に責任を取れるのかということ。

 走塁に関してもう一つ、ダメ出ししたいプレーがあった。準決勝の韓国戦で同点の8回一死一塁。近藤が一ゴロの併殺崩れで一塁を駆け抜けた際、なぜかフェアゾーンに立っており、韓国の選手がタッチ。二塁へ進む意思はなかったと判定されてセーフとなり、リプレー検証でも覆らなかった。でも、あれはアウトと判定されてもおかしくない。結果的に3点を勝ち越すきっかけとなっただけに、ラッキーやった。

 基本どおりに左足で一塁ベースを踏んでいれば、絶対にファウルゾーンへ進むはず。右足で踏むからバランスを崩してフェアゾーンに出てしまうんや。右足で踏むと一塁手と衝突したり、捻挫したりの原因となる。これもヘッドスライディングと同じでしつこく言い続けていることやけど、プロでも左足でベースを踏むという基本ができていない選手が多い。

 稲葉監督は今回の五輪で勇退になるという。報道でも、次期監督候補の名前がいろいろ出ている。「ヘッドスライディング禁止令」を出すぐらいの監督が誕生してほしい。ケガをすれば、代表チームだけでなく、所属チームにも迷惑をかけるんやから。とはいえ、イチローぐらいしか、そんなこと言いそうにもないけど。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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