ベゾスやマスクに対抗!? トヨタとポルシェが宇宙投資する理由

 7月20日にアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが宇宙に旅立ち、10分10秒という短時間ながら宇宙旅行を経験、地球に帰還したのは記憶に新しいところだが、今度はあのポルシェが宇宙ビジネスに参画するという。

「7月28日、ドイツ車のフォルクスワーゲンを傘下に収める持ち株会社のポルシェSEが、ドイツの宇宙ベンチャーのイーザル・アエロスペースへ出資すると明らかにしました。ベゾスのブルーオリジンやイーロン・マスクのスペースXなど、今をときめく資産家らが続々と宇宙ビジネスへ進出する中、これに対抗もしくは遅れてはならじという意識が働いているのは明らかです」(経済ジャーナリスト)

 ポルシェは日本のトヨタやホンダと同様、創業者の名前を会社名に冠した会社で、フォルクスワーゲンを設計したフェルディナンド・ポルシェによって創業された。そしてポルシェSEはこのポルシェ家と、ポルシェのビジネスパートナーだったアントン・ピエヒのピエヒ家の両家の資本からなる企業だ(両家は縁戚関係でもある)。

 ただ今回の出資は、ポルシェがそのまま宇宙ビジネスを手掛けるというものではなく、ベンチャーキャピタルやスイスの銀行らと一緒にイーザル社の資金調達に応じるというもので、また、既に宇宙ビジネスで先行しているブルーオリジンやスペースXは有人飛行でしのぎを削っている一方、イーザル社は小型衛星の打ち上げ事業でこれらと伍していく目論みであると伝えられている。日本でも3月には福井県が“県民衛星”を打ち上げるなど、民間企業から国家機関、自治体レベルまでこの部分の需要は相当厚く、イーザル社は27年までに354億ドルを超える市場になると見ている。

 特に自動車は自動走行の時代が間近に迫り、これはAIが通信衛星を用いたシステムを搭載しておこなうものであるから、宇宙の分野とは密接に関わってくる。では、他のメーカーはどうなのかと言えば、例えばトヨタは19年、JAXAと国際宇宙探査ミッションへ挑戦することで合意。地面から離れて宇宙でも自動車を走らせる野望を抱いている。

「トヨタは今年2月、29年打ち上げで30年代には有人での月面探査を行うとして、その際に活躍する月面探査車の『ルナ・クルーザー』の開発を進めていることを明らかにしています。その背景には、単に宇宙ビジネスの需要が大きいということだけでなく、水素と酸素を反応させて電気を生み出す燃料電池車の技術を過酷な月面の環境で磨き、その技術を地球上に持ち帰って生かすそうという狙いもあります」(前出・ジャーナリスト)

 資本が国籍を問わなくなった今、今度は地表すら離れて宇宙に流れ込む時代のようだ。

(猫間滋)

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