矢野・阪神VS原・巨人「優勝するのはどっちだ!?」(1)クロマティを彷彿させる

 4月に8連勝をするなどスタートダッシュに成功した阪神タイガース。7月1日には43勝26敗の貯金17を誇るなど、優勝した05年以来の快進撃だった。ところがここへきて、戦線離脱していた丸と坂本が復帰した巨人が、猛然と襲いかかる。果たして、優勝するのはどっちなのか? OBたちがペナントさながらの大舌戦を繰り広げた。

 今季のセ・リーグは風雲急を告げている。05年以来16年ぶりとなるリーグ優勝を期待する阪神ファンにとっても、これほど一喜一憂するシーズンは珍しいのではないか。ファンの間ではツイッター上でも「#あかん優勝してしまう」と盛り上がっていたのも束の間、6月25日から、5位DeNAに3タテを食らうと、そのまま失速。最大8ゲームあった2位・巨人との差は、7月2日時点では1.5差にまで縮まった。スポーツ紙遊軍記者によれば、

「戦列を離れていた丸佳浩(32)が復帰後9試合連続安打を放つなど好調です。長嶋茂雄・終身名誉監督(85)に打撃指導を受けて『もう大丈夫だ』と太鼓判を押されました。丸効果もあり、2番ウィーラー(34)、3番丸、4番・岡本和真(25)、5番・坂本勇人(32)の主軸打線が安定しています」

 復調の丸の活躍が「今後の巨人の首位奪取のためには不可欠」と言うのは、阪神と巨人の両チームに在籍経験のある広澤克実氏だ。

「6月終了時点での丸の打率は2割7分3厘ですが、本来のフォームを取り戻せば3割を打つバッターです。テイクバックの際のヒッチ(一度グリップを下げてからトップに上げる予備動作)が、まだ彼本来のフォームに合っていません。好調時のテイクバックなら3割到達可能です」

 規定打数である400打数で3割を打つには120安打が必要。しかし、10本足りない110安打の成績にとどまれば、打率は2割7分5厘となる計算だ。この10本の差を埋められるかが、丸の復調を占うバロメーターとなりそうである。

 一方、1、2番打者の出塁率の高さがチームの躍進につながっていると解説するのは、巨人OBの駒田徳広氏。

「巨人は1番の松原聖弥(26)とウィーラー。阪神では近本光司(26)と中野拓夢(25)、あるいは糸原健斗(28)の1・2番が出塁して得点に絡む攻撃をしてくれるので、他チームにとっては非常に厄介な打線になっていますね」

 広澤氏があとを引き取って言う。

「阪神打線は近本→糸原・中野の出塁率の高さ(3選手とも3割3分前後)が強みで、不振の主砲・大山悠輔(26)が打てずとも、マルテ(30)→サンズ(33)→佐藤輝明(22)→梅野隆太郎(30)と、打線に切れ目がない。他チームから一歩抜け出た大きな強みです」

 対する巨人は、ウィーラーへの評価がうなぎ登りだ。阪神OBの江本孟紀氏も絶賛する。

「あれだけ日本野球を徹底している助っ人打者を初めて見ました。まったく振り回さず、センター返しや右中間と徹底しており、それがセ・リーグトップの得点圏打率.436(7月1日時点、以下同)に結びついています。巨人の好調はフォア・ザ・チームの精神が見えるウィーラーがカギであり、その存在が大きい」

 近年、巨人の助っ人といえば、「お騒がせ」や「金食い虫」のような問題選手が多かっただけに、往年のクロマティと重ね合わせるOBもいるほどだ。駒田氏は、

「ウィーラーは恐らくチームでの居心地がいいんでしょう。助っ人選手には常勝巨人の居心地を悪く感じるタイプもいましたが、ウィーラーにはそれがない。彼の明るさは巨人が欲しがっていたものです。僕らの頃の(同僚の)クロマティも、明るいキャラで巨人を強くしてくれました。彼がいなければ優勝回数は少なかったと思います」

 まさに、新ムードメーカーなのである。

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