世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「東京五輪で期待したい2人の投手」

 東京五輪の野球日本代表メンバーが発表された。正式種目になってから金メダルを獲得したことがないから、自国開催の今回こそ頂点に立ってほしい。米国、韓国などライバル国がどこまで本気で挑んでくるかわからないが、自分たちの力さえ発揮できれば勝てるはず。ただ、メンバーを見ると一抹の不安も感じる。

 実績をとるか、勢いをとるか。稲葉監督も悩んだと思うけど、先発投手陣に関しては過去の実績重視の選出となった。高卒2年目ながら、オリックスの左のエースとなった宮城は、国際大会でも活躍できると思ったけど落選。中日で今シーズン絶好調の柳も選ばれなかった。代表入りした先発投手のエース格は、田中将大と菅野。2人とも百戦錬磨の投手やけど、今の調子を見ると大舞台で使うのに勇気がいると思うで。

 メジャー帰りのマー君は2013年に24勝無敗の神がかり的な成績を残した時と比べると、残念ながら力強さ、安定感ともに落ちている。成績自体は交流戦を終えた段階で2勝4敗と黒星が先行。以前は力でねじ伏せる投球ができていたけど、今はスプリットを軸にかわす投球が目立つ。

 日本はメジャーよりも振り回す打者が少ないから、低めのボール球を見極められると、どうしても苦しい投球になる。日米のストライクゾーンの違いにもまだ戸惑いを感じているようで、際どい球をボールと判定された直後に痛打されるシーンも見受けられる。「マー君、神の子、不思議な子」と、ノムさんが名言を残したけど、五輪で輝きを取り戻すことを期待したい。

 もう一人のエース格、菅野もピリッとしない。右肘痛から復帰2戦目となった6月13日のロッテ戦では、3回途中4失点KO。リーグ戦再開前に再調整のため出場選手登録を抹消された。本調子からほど遠いままで、本番までにどこまで立て直せるか。準決勝、決勝のマウンドは、実績から考えると菅野、田中のいずれかが任されることになると思うけど、ちょっと怖い。2人の調子が上がらないようだと、リリーフ起用も視野に入れている山本由伸を先発の軸に据えたほうがいい。変則右腕の青柳も、初対決で打つのが難しいタイプ。大事な試合の先発候補として考える手はある。

 野手のほうでの不安は足のスペシャリストがいないこと。19年のプレミア12では周東が選ばれて活躍したけど、今回は落選となった。メンバーがプレミアの28名から24名に減ったこともあるけど、今年の調子では選びにくく、交流戦中の右手人差し指骨折が決定打となった。去年は世界記録の13試合連続盗塁をマークするなど大ブレイク。僕も新しいスター候補として期待していただけに、今年の成績は残念で仕方ない。

 今回のメンバーを見ると勝負どころの代走は源田、山田あたりになる。過去の国際大会を振り返ると、土壇場の盗塁が流れを変えてきた。2013年WBCの台湾戦では1点ビハインドの9回二死一塁から鳥谷が二盗に成功して、井端の同点適時打を呼び込んだ。逆に2013年WBCの準決勝プエルトリコ戦では2点を追う8回二死一、二塁で、痛恨のダブルスチール失敗で敗退した。ここぞという時に勇気を持って、いいスタートを切れるかどうか。源田、山田とも経験豊富な選手。日本のお家芸の機動力野球を発揮して、金メダルをつかみ取ってほしい。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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