小池都知事の療養は「敵前逃亡」ではなく「首相獲り」の狼煙だった!?

 6月22日の夜に「過度の疲労」を理由に療養のため入院。27日には「医師の判断で」療養を延長して、30日には復帰したが、当面はテレワークでの公務復帰で、当面は登庁をしないとしている小池百合子東京都知事。これに対し、「敵前逃亡」や「責任放棄」といった声が上がるのは想定内として、さらなる深謀として、このタイミングで「首相獲り」に動いたといった見方さえ出ている。

「1カ月を切った東京五輪を前にさらなる感染拡大の傾向に、7月4日投開票の東京都議選を直前に控えた今、病院に駆け込んだというのでは責任放棄の誹りは免れず、麻生太郎財務相が『自分でまいた種』と言ったような批判の声が上がるのは当然でしょう。根強いのが『敵前逃亡』説。前回の17年の都議選は、小池氏が率いる都民ファーストの会が旋風を巻き起こしたのは記憶に新しいところですが、例えば最近の共同通信の世論調査によれば、自民31.8%、都民ファースト12.1%の政党支持率で自民が優勢で都民ファーストの敗色は濃厚。しかも小池氏が陣頭指揮に立たないのだから、都民ファーストが獲得した4割の議席が減るのはほぼ確実。旗色が悪い船には乗らないのが小池氏の特徴ですから、これで“逃亡”と言わずして何と言えばいいのか分かりません」(地方自治に詳しいフリージャーナリスト)

 となれば、療養が続くといちばん得をするのは自民党だ。本来なら政権与党としてコロナ対応のマズさで指弾を浴びてマイナスに影響しがちな今、敵がいないのだから本来の強みがモノを言う。そして当然、いちばん損をするのが都民ファースト。指揮官不在のままただただ負けるのが目に見えた戦いに臨む兵の失望は想像に難くなく、怨嗟の声が今にも聞こえてくるようだ。

 そんな状況をなぜ小池氏は指をくわえて見ていられるのだろうか。機を見るに敏で有名な彼女のこと。そこで出ているのが、「次の首相」の芽を残そうという「首相獲り」説だ。

「28日の朝日新聞の調査では、小池氏の支持率は57%にも達し、小池人気自体は高い。一時の勢いに乗った新興勢力に過ぎず、さして地盤もない都民ファーストを見捨てたところで買う恨みは少ない。それよりも、4年前に冷や飯を食らった自民に恩を売っておいた方が国政を意識した場合、メリットは大きい。さらに都合が良いことに、つい先日、選挙民に香典や枕花をバラ撒いていたことで公職選挙法違反に問われていた菅原一秀・元経産相に裁判所が3年間の公民権停止を下したばかり。議員を辞職した菅原氏の選挙区は東京10区で、小池氏が衆院議員だった時の9区のお隣です。だから東京五輪をなんとか無難に終えて、その頃には祝祭を終えた達成感で国民世論も主催者を讃える色で染まっているでしょうから、これを追い風として五輪後に行われるであろう衆院選挙に出馬。日本初の女性首相の座を狙っているという説が説得力をもって語られています」(前出・ジャーナリスト)

 先の麻生発言を受けて、二階俊博自民党幹事長は「問題外」とバッサリと切り捨てて小池氏を擁護した。小池氏が中央政界で後ろ盾とするのは当然、かねてから親しいとされる二階氏だ。小池氏の「敵前逃亡」はむしろ、「戦いの狼煙」が上がったと見るべきだろう。
 
(猫間滋)

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