世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「交流戦Vでオリックスが弱点克服!?」

 オリックスが交流戦の優勝を飾った。頑張ればチャンスはあると思っていたけど、あれよあれよの6連勝フィニッシュ。終わってみれば12勝5敗1分けの見事な成績やった。2年連続でパ・リーグ最下位だったチームの快進撃を驚いた人も多いはず。でも、ちょっと打てるようになれば、これぐらいやれる力はあった。山岡、山本由伸、宮城の先発3本柱は12球団でもナンバーワンと言っていい安定感がある。もともと勝率5割以下で低迷するほうがおかしいぐらいやった。

 交流戦の勝因は12球団トップの96得点を挙げたこと。1試合平均で5点以上を奪ったことになる。なんと言っても大きいのは、1番打者の福田の頑張りやな。今までは吉田正尚というポイントゲッターを生かす打線を組めなかった。中嶋監督も日替わりで打線を組んでいたけど、交流戦ぐらいからようやく、福田、宗、吉田正尚の1〜3番を固定して戦えるようになった。福田は交流戦に全試合スタメンで、打率3割9分1厘、出塁率5割の目をみはる数字を残した。

 いつも言うように、いくらクリーンアップが豪華でも、1、2番がお膳立てできなかったら仕事はできない。逆に言うと、1、2番さえしっかりしていれば、それなりに得点は取れるということ。俊足の走者が塁に出たらバッテリーは集中力が乱れるし、ランナーが一死三塁なら主軸打者は外野フライでも仕事をしたことになるんやから。

 福田はもっと前から1番に定着しなければいけない選手やった。広陵高、明治大学、NTT東日本とアマチュアではエリートコースを歩んできた。17年のドラフト3位で入団すると、1年目から113試合、2年目には135試合に出場したのに、昨年は76試合の出場に終わった。身長167センチで非力な打撃がネックになってたけど、我慢して使えば、それなりに結果を残す選手やった。本職の二遊間では若手の台頭で居場所がなくなっていたけど、競争相手が少ないセンターへのコンバートではい上がってきた。

 プレーでも必死さが伝わってくる。中日戦ではファウル11球を挟んで16球目をタイムリーヒットにする粘りを見せた。昨年までは上体に頼った打ち方やったけど、今年は下半身をどっしりと構えて、腰の回転で打てるようになった。今の調子でずっと打ち続けることは難しいけど、打率2割8分はクリアする力がある。機動力も使えるし、たとえ調子が悪くなっても、中嶋監督には我慢して1番で使ってほしいな。

 再開したリーグ戦でもオリックスは台風の目になると思うし、ならなアカン。楽天、ソフトバンクの状況を見ても、十分にチャンスはある。4年連続日本一のソフトバンクは故障者が多く、中継ぎエースのモイネロもキューバ代表で抜けていたため、去年までの強さは感じなかった。楽天も、混戦を抜け出すだけの決め手がない。

 オリックスの最大の弱点は、負け癖がついてしまっていたこと。イチローがいた96年以来、12球団で最もリーグ優勝から遠ざかっている。その間、大半がBクラスで選手らも自信を失っていた。今回の交流戦Vをきっかけに、勝てるチームに変身する可能性はある。阪神との日本シリーズ関西決戦も夢ではないと思う。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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