「牛丼」の一斉値上げが始まる!?世界的に牛肉価格が高騰中

 世界的に穀物や金属などの「資源」の価格が高騰、その影響は我々にとって身近な「牛肉」にまで及んでいる。

「理由は皮肉なことに、世界的にコロナ禍からの立ち直りが進んでいるということです。それまではコロナが猛威をふるう中で経済活動がストップしていたので自然とストックが減っていたところ、人口が多く大消費地である中国が早くからコロナ禍を脱して消費が進み、そこへきて今度はアメリカやヨーロッパでワクチン接種が進んで経済が立ち直ってきたことで資源需要が急速に増したのです」(経済ジャーナリスト)

 赤身と脂身が混ざって食肉向きで、しかも安価なことから牛丼や焼き肉によく用いられる牛バラ肉の部位の1つであるショートプレートのスライスのアメリカ産冷凍肉の卸値を見ると、3月〜4月の高値で970円だったものが、5月後半までには高値で1173円まで値上がりしている。大豆やトウモロコシといったエサとなる穀物が高くなっている上に、中国などでの需要が増したことが理由として指摘されている。

「アメリカ以外の牛肉の供給国として大きいオーストラリアで干ばつがあったことでアメリカ産牛肉への依存が高まって日米貿易協定の基準を超えてしまったため、政府は3月18日には政府が関税引き上げによる30日間の輸入制限(セーフガード)をかけざるを得なくなった。このこともあって価格高騰に追い打ちをかけました。たまったものではないのが食肉の取り扱い業者でしょう。仕入れ値が上がる一方、卸先の外食はコロナ禍で苦しんでいるので値上げに対応できる体力がない。利益の薄い商売をしないといけませんから」(前出・ジャーナリスト)

 政治対立も値上がりに拍車をかけている。中国も輸入牛肉で大きく依存していたオーストラリアとは、昨年4月にオーストラリア側が武漢におけるコロナの発生源を厳しく調査するよう求めたことから両国は激しく対立。もう1年以上、石炭や農産物の輸入制限をかけてケンカ状態だ。勢い、アメリカ産牛肉への依存を高める形となっているのだから、アメリカ産牛肉の高騰はしばらく続きそうだ。

 今のところまだ牛丼や焼き肉の店頭価格までは反映していないが、今の状況が続くようであれば、もしかしたら「チェーン各社値上げ」なんてことになってもおかしくないだろう。

(猫間滋)

ライフ