「事故物件」ってそもそもナニ!? 国交相が示した定義とは

「事故物件住みます」芸人として10軒以上の事故物件に住んだことがある松原タニシの書籍『事故物件怪談 恐い間取り』を元に、『リング』や『スマホを落としただけなのに』シリーズの中田秀夫監督が亀梨和也主演で昨年に実写映画化したことでこのところ注目されている「事故物件」。

 不動産用語的に言えば、その物件に住んでいた住人が“あまり普通ではない死に方”を遂げたことで、「心理的な瑕疵」、つまり「忌まわしい」という気持ちが生じた物件ということになるが、要は「いわくつきの物件」のこと。だがこの「事故物件」、実は明確な定義はなかった。

「事故物件を巡っては、物件の売買や賃貸の現場で『事故』があったことの告知の有無とその後の訴訟トラブルが少なからずある一方、適切な取り扱いや告知に関する基準がなかったことから国土交通省として昨年2月から有識者会議を設けるなどしてガイドラインの作成を進めていました。そして5月20日に、その中身の案が公開されたんです」(経済ジャーナリスト)

 この「いわく言い難い物件」を行政が定義したというのだから、その中身が気になるので実際に見てみると、①「他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合」というのが「事故物件」なのだという。だから告知が必要となる。一方、「自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合」は「事故」には当たらず、告知は必要ないとしている。後者の場合は「普通」の死だからだ。

 でも不審な死でなくても、「忌まわしい」という気持ちが生じるのであればそれは「事故」として扱うようだ。というのも、②「長期間にわたって人知れず放置されたこと等に伴い、室内外に臭気・害虫等が発生し、いわゆる特殊清掃等が行われた場合」においては告知が必要とされているからだ。

 これで「事故」の中身については線引きの案が示されたことになる。そこで次に問題となるのが、「事故物件」にはいつまで「事故物件」としての烙印が押され続けるかということだ。つまり、告知の有無の適用の範囲の問題だが、これについては①②共に「概ね3年間」は告知が必要とされている。

「ガイドライン案の中では、『事故があった後にいったん第3者が借りたら心理的に忌まわしさが緩和される』『事故後1年は賃貸不可で、賃料に反映されるのは2年』といった、過去に訴訟に発展したケースで下された判例などではその扱いが異なっていることから、これを踏まえた上で『3年』という統一的な基準を打ち出しています。実際、事故があると風評も広がってオーナーや不動産業者はその扱いに困ってしまうため、おそらくは例えば不動産業者の社員を一定期間住まわせて、『誰かが住んだのだからもう事故物件ではなくなった』という『事故物件ロンダリング』が巷では行われていることも考慮した上でのことでしょう」(前出・ジャーナリスト)

 国交省では今回のガイドライン案の公表と共に、パブリックコメントの募集も行っている。だから、「事故物件」の定義も適用の範囲も今後変更されるかもしれないが、いずれにしても悲しいかな、事故が起こってしまうと商売としては厄介なことには変わらない。

(猫間滋)

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