ラーメン店員「ブチギレ動画」で注目、被害投稿者が訴えられるリスクは?

 ウーバー絡みのニュースといえば、配達員による暴走運転・マナー違反や運営側のブラックぶりなど加害者側の立場として報じられる機会が多いが、今回は被害者として世間の注目を集めた。

 2021年4月13日、情報番組「めざましテレビ」(フジテレビ系)では、ウーバー配達員が大阪市内の大手ラーメンチェーンの店員に恫喝される映像が流された。映像は配達員のボディカメラで撮影されたものだ。

 同報道では、トラブルが起きたのは4月5日23時30分頃。配達員がウーバー専用のバッグを自身の体と店の壁に挟んで料理を入れようとしたところ、店員から「店の壁が汚れるから止めてほしい」と指摘された。配達員はその店員の物言いを見下されているように感じたため、料理の配達をその場でキャンセル。激昂した店員は「待てや、コラ!」「土下座して謝れ!」などの罵声を浴びせ、配達員の頭を叩くなどの暴行を加えた。

 事の経緯はともあれ、暴力をふるった以上店側に非があるのは言うまでもない事実だ。ネット上の反応は《店員の態度が気に入らないからって配達をキャンセルするのはプロとして失格》《暴力をふるった店員はもちろん悪いけど、配達員の態度も悪かったのでは?》《この店員は配達員を自分の店の小間使いアルバイト程度にしか思っていなかったのだろう》など賛否両論あるようだ。

 特にSNS上では、こうしたトラブルの模様が告発的に投稿されることも珍しくないが、逆に投稿者側が訴えられるリスクもあると弁護士は解説する。

「大前提として、他人が通常衣服を着けないでいる場所をのぞき見る行為などは軽犯罪法で罰せられますが、ただ隠し撮りをしただけという場合、日本には盗撮罪がないため刑事罰には問われません。しかし、盗撮行為は各都道府県の条例によって規制されているため、地域によっては違反行為となることもあります。また、民法では判例上、承諾なしに容姿を撮影されない権利(肖像権やプライバシー権)が認められているため、損害賠償請求の対象となる可能性もあります」

 また、仮にある人物が迷惑行為を働いていていたとして、その容姿を無断で撮影してSNSなどで拡散させた場合、撮影者側が法的リスクを背負う可能性もあるという。

「容姿に加えて氏名、住所、出身大学、職場など個人情報も拡散させた場合、名誉毀損罪として刑事責任を問われてしまうこともあります。よく誤解されがちですが、名誉毀損はたとえ動画の内容が事実であったとしても成立します。というより正確にいえば、名誉毀損は『公然と』『事実を摘示し』『名誉を毀損する』と発生するため、事実であることが成立要件なのです。名誉毀損罪は3年以下の懲役・禁錮、もしくは50万円以下の罰金。事業絡みの案件だと100万円の罰金に処されることも。公益を図る目的であれば名誉毀損に該当しない可能性もありますが、それも一概にはいえないため、むやみに他人の顔を無断で公開・拡散する行為は避けたほうが賢明でしょう」

 今回は動画の顔にモザイクが掛けられていたが、ケースによっては迷惑行為を働く輩を晒し上げるつもりが、逆に自分自身が加害者となってしまうことも…。ミイラ取りがミイラにならぬよう気を付けたいところだ。

(橋爪けいすけ)

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