深刻な社会問題として暗い影を落とすパワハラは、警察でも横行していた。
昨年10月に、長崎県警佐世保署の交通課の男性警部補が上司からのパワハラを示唆する遺書を残して、自宅で自死。今年3月には、兵庫県警の男性巡査部長が4人の部下に腕立て伏せ500回を命令したり、10キロの荷物をつけて10分間立ち泳ぎさせたとして、戒告処分を受けている。
「私の時代にも寮で夜中に先輩が『セミの声が聞きたい』と言い出せば、後輩は柱にしがみついてセミの鳴き声を延々とやらされたことも。また寮に古くからいる巡査が、階級が上にもかかわらず新任ということで巡査部長をいじめたり、異常な世界でしたよ」
手柄をあげれば同僚から妬みや嫉みを買って孤立感を味わい、人間関係で苦労する警察官も珍しくなかった。
歓楽街でのお色気事情も気になるところ。現役時代、道警の稲葉氏にとって、すすきのは庭のような場所。夜の店がひしめくが、警察官がガサ入れ情報を流す代わりに、「特別サービス」の甘い汁を吸うことはあったのか。
「ピンク店の女の子とタダで遊べるなんて、聞いたことはなかったですね。ヤクザが警察官の弱みを握るために、ハニートラップを仕掛けてくるなんて話もまったくなかった。ただ、ここ最近で聞いたのは、ある警察官がすすきのの経営者に『金をよこせ』とは言わないものの、『何か用事がある時は、たばこのケースに入れといて』という含みを持たせた言い方で要求してきたそうです。その他にも、すすきので夜のお店を経営している企業などに天下りしている警察官もいます。組織として風営法の対象業者に天下りすることをなぜ許すのか、不思議ですよね」
まるで「みかじめ料」のように遠回しにお金をせびり、定年後の仕事まで斡旋してもらう。歓楽街では今のほうがやりたい放題なのかもしれない。
昭和の刑事ドラマの取り調べといえば、「かつ丼」のイメージが定番だが、現在は自白に向けた利益誘導につながるとされ、禁じられている。それでも牧歌的な時代には、こんなことも許されていたという。
「拳銃発砲事件の被疑者のヤクザを取り調べていた時、(被疑者のリクエストで)取調室に高級な寿司やカニを出前してもらうことがありました。こっちもつまませてもらっていたら、『俺にも食べさせてくれや』と言って、『偉い人』も入ってきた。被疑者も実刑で1年くらいだから、『じゃあ行ってくるわ』と和やかな雰囲気で、いい時代でしたね」
昔も今もリアルな警察ウラ事情は、ドラマや小説よりも生々しいのである。
*「週刊アサヒ芸能」4月8日号より