北海道警元刑事がバラした「裏金口座とシャブ隠蔽」(2)「スパイ養成」でノルマ達成

 一方、現職時代、職務に忠実だったにもかかわらず、警察組織に守ってもらえなかったのが稲葉氏である。

 保安課銃器対策室に所属していた8年間で100丁以上の拳銃を押収し、「銃器捜査のエース」と呼ばれていたが、みずから薬物に手を染めて02年に逮捕。11年に刑期満了後、道警の「違法捜査」を赤裸々に暴露した「恥さらし─北海道警悪徳刑事の告白」(講談社)が話題を呼び、16年に綾野剛主演で公開された映画「日本で一番悪い奴ら」(東映/日活)のモデルにもなった。

 その稲葉氏が機動捜査隊にいた時に、毎月30ポイント以上の「ノルマ」を課せられた。殺人や強盗事件の犯人を捕まえればその月のノルマは一気に達成するが、現実では頻繁に起こる事件ではない。軽犯罪の取り締まりでポイントを稼ぐことが主で、ノルマに届かなければ胃が痛くなるのは、会社の営業マンとよく似ている。

 110番通報だけではノルマに追いつかず、「S(エス)」(情報提供者=SPYの頭文字からとった隠語)を使った捜査を先輩から叩き込まれたという。

 常に20人くらいのエスと関係を作っていた稲葉氏は、監修を務めた「警察のウラ知識」の中で、仕立て上げるやり方について、次のように明かしている。

〈一番手っ取り早いのが、軽犯罪を見逃して「お、こいつは信頼できる奴なのかも」と思わせること。保安課の銃器対策室にいた頃、仕事をしくじった若い衆がヤクザの親分にボコボコにされている現場に居合わせたことがあります。当然止めますが、なかなかやめようとしない。そこで「これ以上やったらパクるぞ!」と言ったんです。逆に言えば、この場では逮捕しないよって伝えたわけです。それで親分に「話がわかるやつだ」って信頼してもらえて。向こうは基本的に追われる立場の人間ですから、何かあったときに「どうしたらいいのか」と電話をくれるので、そこでうまくつけ込むんです(笑)〉

 見た目だけでエスの素質を判断するコツは特にない。友達作りと同じでフィーリングが大事だという。そして、相手が警察を利用しようと思っているのを理解しながら、持ちつ持たれつの関係を徐々に作っていく。

「覚醒剤常習者の女性のエスがいましたが、ウイークリーマンションを借りてあげて、常に部屋の名前でガサ状(捜索差押許可状)を取っておくんです。それで彼女の家に覚醒剤や拳銃を持っている奴が来たら電話で教えてくれて、すぐに家宅捜索ができる。場所に対してのガサ状なので、エスの女性はあくまでも立会人として逮捕はせず、効率よく捕まえられましたね」

 その他にもノルマを達成する方法はある。指名手配犯を逮捕するとポイントがアップする仕組みを利用するのだ。被疑者が家にいることがわかっていても、所在不明にして指名手配をかけてから逮捕する、そんな「裏ワザ」も使っていた。

 警察組織ではこんなことが常態化していたというのだ。

*「週刊アサヒ芸能」4月8日号より

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