気鋭の作家が明かす中国“秘密結社”の実態「SNSで共産党の醜聞を暴露」

 コロナ禍や対米関係など、その存在がよりクローズアップされている中国。大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作家・安田峰俊氏は、近著「現代中国の秘密結社」(中公新書ラクレ)で、隣国の知られざる実情をつまびらかにする。

 安田氏によれば、中国の秘密結社は3つに大別されるという。

「義兄弟としての契りを交わし、その相手が危機に直面したら生命を賭してでも守り合う『会党』、民間信仰の宗教的つながりをもとに信者たちの人間関係が結ばれた『教門』、そしてなんらかの政治目的を持つ『政治結社』があります」

 今や一党独裁である中国共産党も、政権奪取前は地下活動に従事し、これに該当していたのだ。

 そんな中国で「中国致公党」という耳慣れない政党がある。はたして、どういう役割を担っているのか。

「伝統中国の秘密結社である『洪門』の一派が政党化し、紆余曲折を経て中国共産党に協力し、民主党派として生き残った特殊な歴史を持っています」

 この党が注目されたのは、12年12月3日の致公党大会だった。日本でも「花王アジエンス」のCMに出演するなど人気のチャン・ツィイーが出席。さらにハリウッドにも進出する女優リー・ビンビンも名前を連ねるなど、有名人が目立つ。安田氏によれば、世界的女優を招き入れたのには理由があるという。

「致公党そのものが、共産党の外郭団体に等しい存在だからです。その役割は対外統一戦線工作。つまり、海外で親中派の協力者を確保・育成する活動なのです」

 コロナ禍にあっても、致公党の「マスク外交」が活発だったという。オーストラリアやカナダ、パナマ、コスタリカなどの同胞団体に大量のマスクを送っている。

 さて、致公党の最大のスキャンダルが、党の顔であるチャン・ツィイーの「援助騒動」であった。

「香港や台湾のゴシップ紙などが、失脚した当局高官や富豪らを相手に、高額の“接待”をしていたと報じました」(安田氏)

 これを手引きしたのが致公党関係者ではないかとささやかれた。ある報道は、チャンは10年間で7億人民元(約87億円)の財を築いたと書き立てた。

 もちろん、チャン側も法的手段に訴え、多くは損害賠償を勝ち取っている。

 ここ最近、話題になっているのは、昨年6月4日に建国宣言をした「新中国連邦」だ。亡命中の中国人富豪と、米トランプ政権の元首席戦略官が手を組み、共産党の打倒を目指すサイバー国家なのだという。

「この富豪は、SNSを使って共産党高官らの虚実入り混じったスキャンダルを大量に暴露。一時は多くのファンを獲得しましたが、最近はネタ切れなのか『新型コロナウイルスは中国が開発した生物兵器』というようなデマをばらまくようになりました」(安田氏)

 陰謀論とフェイクニュースが飛び交うのが、いかにも現代の秘密結社なのであろうか。

※写真はイメージです

※「週刊アサヒ芸能」3月18日号より

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