廃炉まで何年かかる?福島原発が直面する作業員問題「白内障のアンケートも」

 2011年3月11日、宮城県沖で発生したM9の巨大地震により、福島第一原発では核燃料がメルトダウンを起こし、原子炉格納容器とともに建屋が大きな損傷を受けた。1〜3号機の格納容器を冷やすために、水を注入しているが、この措置により大量の汚染水の処理が火急の課題となっている。それと同様に待ったなしとなっているのが、作業員不足の問題だ。

 原発作業員の被曝線量は通常1年間で50ミリシーベルト、5年で100ミリシーベルトと決められている。

 事故後から福島原発の取材を続けるジャーナリストの村上和巳氏が語る。

「廃炉作業には、手の付けやすいところから作業を進めることになり、結果的に線量の高い建屋の中など難しい現場ばかり増えている。また、被曝上限を超えると数年間働けなくなるため、年が経つほどベテランの作業員が減ることになります。つまり、素人が増え、作業の難度が高くなればつまらない事故が起こる可能性もあるのです。福島で作業するためには家族と離れ、現場近くで働くことになり、ますます人が集まらない状況になっている」

 事故直後の緊急時は特例措置として上限は250ミリシーベルトまで引き上げられた。過酷な作業に当たった作業員は2万人に上っている。

 話を聞いた作業員もそのうちの1人だ。

「確かに除染により線量はいくらか軽減している。それでも建屋の中は、まだまだ線量がべらぼうに高いままだよ」

 昨年12月、2、3号機の原子炉から超高濃度の放射線を検出。ひどい汚染の実態が判明した。

「シールドプラグと呼ばれる格納容器の蓋部分から約2京〜4京ベクレルという極めて高いセシウム137が検出されたのです。放射線量は毎時10シーベルト前後で、近づけば1時間以内に死ぬほどの強さです。今後の廃炉のスケジュールにも影響が出てくるのは必至です」(社会部デスク)

 線量が上がれば作業員の稼働できる時間はさらに短くなり、ますます人手が不足することになるのだ。

 作業員は最後にこう訴えた。

「厚労省から度々アンケートが届いて、白内障になったら知らせてくれとか言ってきてますよ。今のところ、大丈夫ですけど、これからですよ。第一で頑張った吉田(昌郎)所長は大変立派な人でしたよ。危険な場所でも自分から率先して点検していた。ガンで亡くなったのは、その影響もあったのかもしれないね。なんにしても、廃炉は原子炉のデブリを取り出さなきゃ先に進まないが、遠隔操作でロボットを入れても全部壊れてしまう。何千万円もするのが全部パーだよ。それに比べて東電のやつらはJヴィレッジなんかで薄着でジョギングしたりして、安全性をアピールしている。復興なんて、まったくの見かけ倒しでしかないよ」

 村上氏が今後の廃炉の見通しを解説する。

「今後、使用済み燃料を取り出した3号機からデブリの取り出しをすることになる。しかし、今ある最先端の技術をもってしても、格納容器に開いた穴がどうなっているのか、どこにあるか、突き止めることができていない。デブリの取り出しには、新たなロボットを開発しなければなりません。そのためには10年、いや半世紀かかる‥‥」

 天災が引き金となり、人智をはるかに超える大災害が起きた。この10年はほんの序章、廃炉までの長い長い道のりが続くことは間違いない。

※「週刊アサヒ芸能」3月18日号より

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