これまで極秘裏に進められてきたと言われるアップルによる自動運転EV(電気自動車)開発事業「プロジェクト・タイタン」。昨年末に、「2024年にも製造開始か」と報じられ、陽の目を見るかに思われていたが、アップルと組む自動車メーカーについて、交渉相手の名前が挙がっては消え、挙がっては消えと、どうも宙に浮いたかっこうが続いている。
「いくらアップルといえども、イチから車の製造に乗り出すにはあまりにコストが嵩む上に、技術的な設備やノウハウの蓄積がありません。だから、既に自動車の製造分野で技術と人を有するメーカーと組むことになると見られています。ところが、例えば韓国の現代自動車とその傘下の起亜自動車との間で『提携間近』とまで報じられたと思ったら、2月8日には現代側がこれを否定。さらに日本の日産が話を持ち掛けられたと言われていたものの、やはり日産側が協議を行っていないことを明言するなど、アップルカーの製造先は宙ぶらりんの印象を受けます」(経済ジャーナリスト)
これまで提携先として名前が挙がったメーカーは、アメリカのフォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、日本のホンダ、ヨーロッパとアメリカに跨るステランティスなど。だが、一向に話が先に進んだという知らせは届いていない。なぜか。
「よく言われているのが、アップルは単なる委託製造先が欲しいだけで、自動運転技術を共有する“パートナー”を探しているわけではないということ。指示通りの『車両』を作りさえすれば良いという要求では自動車メーカーもなかなか話には乗れないというわけです」(前出・ジャーナリスト)
かのスティーブ・ジョブス氏が示したモノ作りへのこだわりがアップル社最大の売りなわけだが、じゃあ、アイフォンを製造している台湾メーカーが、そこで大きなプラスアルファを得ているのかといえばそうではなく、製造量に適った利益しかあげていないのと事情は同じだというのだ。
ところが、自動車業界は今後の自動運転技術をめぐって厳しい競争が強いられるのは必至。自動車メーカーの台所事情は様々だろうが、そんな状況下で、ただ製造だけ請け負うという会社がなかなか見つからないのも道理というものだ。
果たしてアップルカーの製造元が決まるのはいつになるのか。
(猫間滋)