1月6日に発生したアメリカの連邦議会乱入事件を受け、20日に予定されている新大統領の就任セレモニーを前に、首都ワシントンが物々しい雰囲気に包まれている。
「当日は全米でさらなる抗議デモが起こる可能性が非常に高いので各治安当局がまさに“総力戦”で警戒にあたっています。就任式が行われるワシントンDCでは、会場となる議事堂には足を運ばず、バーチャルで参加するよう市民に呼びかけています。また乱入があった6日には、共和党と民主党の本部建物付近で爆発物が見つかり、議事堂周辺の車両から複数の火炎瓶や銃器が見つかったことも警戒を強めることにつながっています」(在米ジャーナリスト)
州をまたいでアメリカ全土の治安維持にあたるFBIも緊張を高めている。FBIは16日以降、武装集団による抗議デモが行われる可能性が高いとして警戒を呼びかけている。また、ワシントンにいたっては、既に現時点で周辺6州から6000人の州兵が派遣され、就任式当日には、会場周辺に2メートルのフェンスを張り巡らせ、1万人から最大1万5000人の州兵を配備する予定だという。
軍も12日に異例の声明を出した。米軍の統合参謀本部が議会乱入事件を非難し、「バイデン次期大統領が就任して第46代の軍最高司令官になる」と明言したのだ。
「軍のトップが政治的なメッセージを発するということ自体が異例ですが、それも踏まえれば、軍は次の正当な最高司令官の下で働くことになるので、それに対し違法なデモ活動が行われた場合は軍として断固とした措置を取るというメッセージと受け止められますね」(前出・ジャーナリスト)
日本人も対岸の火事では済まされない。在アメリカ大使館など日本政府の出先機関はアメリカ在住の日本人に警告を発している。
それによれば、当面はワシントン市街中心部に近づかないようにすること、ワシントンに限らず、議事堂などの政治関連施設やその周辺も同じで、間違ってもデモに近づいたり写真を撮ったりしないこと。そして警察官の職質に素直に応じるよう求めている。
まるで国際テロを想定するような警戒ぶりだが、それだけ今のアメリカが異様な状況ということだろう。
(猫間滋)