2021年の国際ニュースの大きな目玉は、アメリカのバイデン政権の誕生。中国や北朝鮮との緊張も高まる中、あきらめの悪い男が再び主役の座を奪おうとしていた。
1月20日に連邦議会議事堂前で宣誓が行われる見通しで、ジョー・バイデン氏(78)が正式に大統領に就任する。「イラン核合意」と「パリ協定」の復帰に意欲を見せるが、不死鳥のごとくよみがえるのは、昨年11月の大統領選で敗れたドナルド・トランプ大統領(74)だ。
「世界のスパイから喰いモノにされる日本」(講談社)の著者で、国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう解説する。
「大統領選でバイデン氏は8000万票を超える一方、トランプ氏は約7400万票を獲得しています。つまり、それだけトランプ氏を支持する人がいて、国内で分断が強まるでしょう。保守派の人だけが集まるSNSアプリ『パーラー』には、トランプ氏の熱狂的支持者とみられる1000万人以上が会員登録していて、ここでは民主党をコキ下ろしたり、どんな陰謀論を吹聴しても誰も文句を言いません。むしろ結束が高まり、過激化していき、どんどんトランプ氏が神格化されているのです」
その当人は早くも24年の大統領選を見据え、任期終了を目前に精力的に動いている。昨年12月にドローンの世界最大手で中国企業のDJIに対して、米国製品の輸出を事実上禁止し、圧力を強化。さらに「嫌がらせで」台湾電撃訪問もささやかれている。
「現時点でできるかぎりの手を打ち、バイデン氏がどんな行動に出ても自分のほうがすごいと思わせるため、ハードルを上げています。すでに新しい政治団体を作って訴訟支援の献金などを呼びかけ、現時点で200億円を集めました。そのうち75%は自由に使えて、選挙だけではなく、プライベートでも使用が可能なんです」(前出・山田氏)
転んでもタダでは起きないトランプ氏が、21年も注目を集めそうだ。
さて、そんな大国の分断を横目に、日本企業はサイバー攻撃の脅威が高まっている。昨年11月、ゲーム大手のカプコンが「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるコンピューターウイルスでサイバー攻撃を受け、約11億円分のビットコインを要求された。
「最近は身代金の二重取りがはやっていて、攻撃側はパソコンに侵入した時、暗号化して使えなくする前に情報を抜き出します。それで、まずは暗号化したことで身代金を要求し、そのあとに、今度は企業秘密や個人情報などを流出させると脅してくるのです」(前出・山田氏)
テレワークが増えたことで狙われやすくなり、世界中でサイバー攻撃の被害が増加。米連邦捜査局(FBI)でも新型コロナの感染拡大が急速に広まって以降、サイバー攻撃の報告数(1日あたり)が400%増加したという。
そんな中、日本の企業は自分たちで守るしか手段はなく、セキュリティーを強化しても完全に防ぐのは難しかった。山田氏が続ける。
「日本はサイバー攻撃を受けても被害の報告義務はなく、企業側は対外イメージが悪くなるのを恐れたり、株価に影響するので穏便に済ませる企業文化がある。攻撃をしても文句を言ってこないので絶好のターゲットになり、ロシア、中国、北朝鮮、韓国のサイバー攻撃犯に狙われています」
いつ「身代金ラッシュ」が起こっても不思議ではない状況なのだ。
※「週刊アサヒ芸能」1月14日号より