来季2000本安打へ、37歳のベテラン・栗山に3年契約を提示した西武の狙いとは?

 埼玉西武ライオンズの将来のチーム像が見えてきた。栗山巧外野手が2000万円アップの1億7000万円(推定)で契約更改した。シーズン終盤は4番を務め、指名打者として初のベストナインに選ばれるなど、年齢を感じさせない活躍ぶりが評価されたのだろう。しかし、驚いたのは、3年契約を提示されたこと。今季、フリーエージェント権(海外)を再取得したとはいえ、来季38歳になる年齢を考えれば、複数年契約を提示しなくても、西武で現役生活を全うすると誰もが思うところだが…。

「球団側から複数年を提示されたのは間違いありません。あと74本と迫った2000本安打のことも影響しているのかもしれません」(球界関係者)

 節目の大台達成となれば、生え抜きではライオンズ史上初となる。栗山自身も「目指すべき数字」と語るなど、記録達成を意識していたが、その言葉の意味はかなり深い。

「もし来季、故障してしまったら、記録達成は21年ではなく、22年シーズンに持ち越しとなります。栗山は記録のためにチームに残ること、現役を続けることを心苦しく思う性格。渡辺久信GMが栗山のそういう性格に配慮して、あえて複数年を提示しました」(前出・球界関係者)

 それだけではない。故障による記録達成の先送りに備えたとなれば、栗山は複数年の提示を拒否していたはずだ。西武は将来の指導者として認めたのだ。

「辻発彦監督の次は、松井稼頭央二軍監督でしょう。その松井二軍監督の次は、栗山の含みもあったようです」(ベテラン記者)

 栗山はベテランになった今も、試合前のグラウンド練習では、1、2を争うマジメさを見せている。かといって、若手に自主トレを強要することはせず、「栗山さんが練習しているのなら」と、背中で後輩たちを牽引してきた。渡辺GMが評価したのは“人柄”であり、次世代の指導者としてチームを託せると判断したようだ。

「複数年の契約を交わすと、成績を落としてしまう選手もいました。急に衰えを見せる選手もいます。他球団なら、ベテランに複数年を提示するリスクがささやかれるものですが、今回そういった声は聞かれませんでした」(スポーツ紙記者)

 一軍登板ナシの松坂に対しても、現役続行の希望をかなえた。西武はFA退団者がもっとも多い球団でもある。しかし、栗山が気持ちよく2000本安打を達成すれば、ファンの印象も変わってくるだろう。異例の複数年提示の狙いはそのあたりにもありそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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