火葬場の元職員に聞いた!棺桶にメガネとチキンを入れてはいけない理由

 ミュージシャン、作家、怪談師など数多くの顔を持つ下駄華緒さん。下駄さんは火葬技士(火葬技術管理士)1級の資格を持ち、火葬場&葬儀屋で働いた経験がある。雑誌「本当にあった愉快な話」(竹書房)では「最期の火を灯す者」という火葬場での体験を元にした漫画の原作を書かれている。

 今回はそんな下駄さんに「棺桶の中に入れてはいけない物」について話をうかがった。

「まずはメガネですね。今の樹脂製のメガネはまだいいんですが、古いガラス製のメガネは最悪です。骨にベチャッとガラスがへばりつく場合があります。まるで頭蓋骨がウルトラセブンのようになっていることがありました」

 今はガラスのメガネ自体少なくなっているが、ガラス製品を入れてしまうことはあるだろう。例えば、釣り竿はガラスファイバー製のものもあり、針のようになり、お骨上げの時に怪我をすることがあるそうだ。気をつけたい。

「お骨上げの時に骨に色がついていて『花の色がつきました』と言われた人がいるかもしれません。これはウソですね。金属が焼けて色がついたんです。棺桶の釘や、銀歯、アクセサリーなどが燃えたんですね」

 なるほど、「銀歯が燃えて色が残ったんですね」とは言いづらいから、「花の色が移ったんですね」と、優しいウソをついてくれているわけだ。

 ガラスや金属のような無機的なものではなく、有機的なものなら問題はないと思うかもしれないが、そうでもないという。

「例えば本は、火葬の大きな妨げ。本を焼却すると本の形のまま灰になります。火が遺体に当たるのを邪魔するので、デレキ(火かき棒)でどけてやらなければなりません」

 また、おにぎりを入れる場合も多いが、おにぎりは燃えづらく、人間の身体が白い灰になってもおにぎりだけ黒く残る場合が多いという。

「メロンを入れられる人もいるのですが、その場合会場中がメロンの香りに包まれます。なんだかホンワカした気分になって、『メロンが好きだったから、幸せだろ』と、笑ってくださる遺族の方もいらっしゃいますが、やっぱり火葬の邪魔にはなりますね」

 最も棺桶に入れられて困るのも、やはりある食べ物だという。

「焼き終わってお骨上げに行くと、足の骨が大量にありました。え? なんでこんなに足の骨があるの? と思ったら、足もとに大量のフライドチキンが入れられていました」

 人間の骨が残るわけだから、当然フライドチキンの骨も残る。どれが人間の骨でフライドチキンの骨なのか見極めるのは難しい。

「間違えて骨壷に入れてしまった場合もあると思います。『フライドチキン好きだったしいいじゃん』と気楽に言ってくれる人もいますが、仏教では畜生と一緒におさめるのは御法度ですからトラブルになる可能性もあります」

 お葬式の際、親族の人たちは、ついつい棺桶の中に色々な副葬品を入れたくなる。これは悪意ではなく、優しさから来ている。

「ただ、日本人はとてもお骨を大事にします。できれば綺麗に遺したいと思っています。だったら、なるべく棺桶の中に物は入れない方がいいですね」

 火葬場の職員はあらかじめ「こういう物は入れないでくださいね」と言うものの、遺族がこっそりと入れてしまう場合が多いという。だから、

「ガラスのメガネを入れると、溶けてお骨にへばりつく場合があります」

 など具体的な例を上げて説明して欲しい、と下駄さんは締めくくった。

(村田らむ)

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