富士の樹海や特殊清掃の現場など、アブない潜入ルポを得意とするライター兼イラストレーターの村田らむ氏。その取材範囲は韓国に及び、日本人観光客が滅多に足を踏み入れないスラム街へ。そこで見た驚愕の光景とは?
韓国には、タルトンネと呼ばれるスラム街がある。タル=月、トンネ=街で「月の街」という非常にオシャレなネーミングだ。なぜ月の街かというと、そもそも人が住まないような“月に手が届きそうな”高山地域に建てられているからだ。オシャレなネーミングとはうらはらな、ボロボロな建物が並んでいる場合が多い。
ただ釜山のタルトンネは、ひと味違う。町おこしでアートの街に生まれ変わった。建物はカラフルに塗られ、奇妙な像や壁絵などのアート作品が並び、多くの観光客が訪れている。観光しながら歩いていると、顔が描かれた豆腐の頭上に家が建っているような、奇妙なゆるキャラを見つけた。
そのキャラクターの矢印に従い、細い路地を進んでいくと、パステルカラーに塗られた家が現れた。家の敷石に違和感を覚えてよく見てみる。敷石には《国分治之墓》と書かれていた。なんと日本人の墓だった!!
この街では、日本統治時代に建てられた日本人の墓を、スラムの建物の敷石にしているのだ。敷石だけでなく、石垣にもズラッと墓石がならんでいるし、階段の石には《南無阿弥陀仏》と書かれた銘板が使われていた。お墓で作られた石垣に、絵の具で絵を描き足してアートにしている場所もあった。
地元の人は「朝鮮戦争の物がない時期に作られた街であるため、仕方なく墓の石を使った。申し訳ないと思っている」と釈明している。
ただ、実はさきほどの豆腐のようなゆるキャラは日本人の墓をイメージしたキャラなのだという。申し訳ないと思ってるのに、見世物にして観光客を呼んでいるわけだ。
ただ日本人の気持ちはひとまず置いておくとして、毎日お墓を踏みつけて暮らすのって、気持ち悪くないのかな? と思った。
(写真・文/村田らむ)