「返品したい」「施設を紹介して」ペットブームに潜む「飼育放棄」の酷い現実

 またもや、人間の無責任な行動により、罪のない多くの動物たちの命が危険にさらされようとしている。

 新型コロナの感染拡大により、自宅にいる時間が増えたことで「癒し」を求め、ペットを購入する人が急増。巷では空前のペットブームが到来しているという。

 都内で数店のペットショップを経営するオーナーによれば、「通常、夏場はペットの需要が下がるものですが、今年は6月、7月だけで半年分の売り上げがあった。多い日には1日で犬が100匹売れた日もあり、まさにペットバブルの再来を実感している」という。

 同氏のチェーンでは現在、「犬が1匹40万円、猫の場合は20万〜30万円」、というのが価格帯のメインとなっているそうだが、

「ここ数年、ペットショップで売れ残ってしまったり、飼い主が飼育できなくなって捨てたりなど、行き場を失ったペットの殺処分が動物愛護団体により、幾度となく問題視されてきた。で、そんな実態に食い止めるために今年の6月には改正動物愛護法が施行され、虐待や遺棄を厳罰化、さらに不適切な飼育を行った場合には、行政による指導や立入検査なども行えるようになったんです。結果、悪質な繁殖業者は鳴りを潜め、同時に犬猫の値段が徐々に上がり始めた。そんな中で新型コロナの感染が拡大し、癒しを求めて需要が急増。値段が急騰しはじめたというわけなんです」(前出・オーナー)

 さらに、そんな状況に拍車をかけ、バブルを後押ししたのが10万円の給付金だったという。

「1人につき支給される給付金は10万円。ですから、4人家族なら40万円というまとまったお金が手に入るわけです。しかも、ステイホームで外出もできない。じゃあ、ここはひとつ、そのカネで犬や猫を、と考える人が多かったようです」(前出・オーナー)

 ところが、なかには生き物を飼った経験もなく、後先のことも深く考えずに、ただただ「癒し」だけを求め、犬や猫を購入してしまったため、当然ながらトラブルが頻発。

「夏前からでしょうね、『猫のウンチってこんなに臭いと思わなかった……もう飼えないから、引き取ってもらないだろうか?』『犬が吠えて眠れないし、近所迷惑。代金はいらないから返品したい』という問い合わせが入るようになり、なかには犬のニオイが気になり、毎日シャンプーしたところ、皮膚が傷つき、そこからばい菌が入って犬が寝込んでしまった。『もういらないから、引き取ってくれる施設を紹介してほしい』という問い合わせもありました。彼らは、動物の命をいったい何だと思っているのか……。動物を扱う仕事をするものとして、本当に、憤りを感じずにはいられませんね」(前出・オーナー)

 悲しいかな、こういった飼育放棄は日本だけではなく、全世界で起こっているのだという。米在住のジャーナリストが語る。

「新型コロナの感染者が最も多いアメリカでも、まったく同じ問題が起こっていて、ニューヨークの動物保護団体『FRIENDS WITH FOUR PAWS』は、新しい飼い主に誓約書の提出を義務づけ、飼育放棄が少なくなるよう努力しているんですが、それでも、飼育放棄し、山林に捨ててしまうといったケースが後を絶たないのだとか。自粛中でこの有様ですからね。この先、自粛が緩和されて、元の生活に戻ったら、さらに飼育放棄が増えることは間違いないでしょうね」

 日本でも、外出自粛要請が緩和された5月下旬ごろから、都内の動物保護施設には連日、子犬や子猫が送り込まれてくる、まさに異常事態が発生しているというのだが……。

 このままコロナ禍と経済停滞が続けば、ペットの世話にかかる費用を捻出できず、飼育放棄するケースは増える可能性がある。

 ペットといえど、一度飼ったら家族も同然。最期まで飼う覚悟がない者は、間違ってもペットなど飼わないことを肝に銘じてもらいたいものだ。

(灯倫太郎)

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