「コロナを除去」「CDC推奨」空気感染デマに便乗した“エアロゾル商法”の実態

《新型コロナは空気感染する》

 もちろんこれは現時点で事実と確認されたわけではないが、たびたびマスコミの記事やSNS上ではこうした言説を見かけることも珍しくない。先日、新型コロナウイルスによる死者数が20万人を突破したアメリカでもそうした状況が見られる。

 9月18日、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「新型コロナウイルスは、約6フィート(約1.83メートル)の距離を空気中の微粒子を介して感染する可能性がある」という指針を発表。しかし、21日までにこのCDCの指針はウェブサイト上から削除され、これまで通り「新型コロナは約6フィート以内にいる個人の間で、せきやくしゃみ、会話の際に放出される飛沫などを介して感染する」という方針に戻した。

 情報が二転三転しているアメリカでの混乱は日本にも影を落としている。日本の一部マスコミなどは読者のミスリードを誘う形で「CDCはコロナが空気感染すると発表」と、結果的に誤った情報を流し、その直後に「CDCが空気感染の指針を削除」と訂正記事を出すなど、対応に追われることとなった。

 日本で“空気感染”という言葉が一人歩きし、誤った情報が広まっている今、ある商品が爆発的に売れていると、家電市況に詳しい専門家は話す。

「コロナが流行するようになってからは、家電量販店では空気清浄機が売れています。今年4月以降の出荷台数が前年と比べて2倍に増えたケースもあり、Amazonなどでも常に売れ筋上位。最近はマスコミなどでも『一部メーカーの空気清浄機がコロナウイルスを減少させる働きがある』『CDCはコロナ対策で空気清浄機を使うことを勧告している』などと報じられているため、さらに買う人が急増しているそうです」

 こうした報道によって、次のような問題点も顕在化してきているという。

「ある企業のオフィスにはさっそく空気洗浄機の訪問販売がやってきたそうです。まったく聞いたこともないようなメーカーの製品で、そのときのセールストークが『コロナを除去します』『CDCも推奨しています』『エアロゾル感染のリスクをゼロにします』といったもの。また、ネットワークビジネス界隈でも同様の手口で被害に遭った方がいらっしゃいます。一方で、大手家電メーカーも、空前の空気清浄機バブルに冷や水を浴びせるようなことをしたくないためか、コロナウイルスの除去効果については口をつぐんだまま。マスコミの飛ばし記事や詐欺まがいのセールス商法が、実体を伴わない株価操作につながっていると言っても過言ではないでしょうね」(前出・専門家)

 インフォデミック(デマの拡散)によってもたらされた特需は長続きしないことを認識すべきかもしれない。

(橋爪けいすけ)

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