コロナ感染後、「陰性」の判定が出たからといって安心はできない。事実、コロナ後遺症に苦しむ元陽性患者が、新たな辛苦に見舞われるケースは少なくない。
今年3月にコロナで家族を失った遺族は、倦怠感があるうえに、歩いていると全身から脱力し、特に膝と腰に力が入らなくなって倒れ込むという。
「当時、保健所も自治体のPCR検査体制も混乱していて、私たち遺族は、家族がコロナで亡くなってもPCR検査を受けられませんでした。陽性患者の話を聞くと、自分たちもやはり感染していたのではないか、後遺症ではないかと思うのです。でも『突然、家族を失ってショックを受けているのだろう』と言われ、済まされてしまう。外を歩くのが怖いです」
コロナ後遺症の倦怠感や疲労感を「コロナ鬱」とひと言で片づけられている人がいるかもしれないのだ。
なぜ人によってさまざまな後遺症が出るのか。コロナ治療の拠点病院となっている大学病院の教授が説明する。
「嗅覚や味覚の異常を訴える患者さんは多いのですが、残念ながら、その原因はまだわかっていません。現時点では新型コロナに感染すると、嗅覚や味覚の神経の周辺で一時的に炎症を起こすからではないかとみられています」
そして同教授はこう続けた。
「当初こそ『新型肺炎』という呼称から、肺に感染して肺炎を起こす感染症と思われましたが、そうではないことがわかってきました。実は新型コロナは、全身の血管が炎症を起こす感染症なのです」
新型コロナの肺炎は、通常の肺炎とは違うといい、
「通常の肺炎は、肺の中の小さな肺胞という袋とその周囲が炎症を起こしますが、新型コロナは肺の毛細血管が炎症を起こします。そのため、肺の毛細血管が詰まります。肺炎というより肺塞栓や肺水腫というほうが近い。肺の血管が詰まれば、激痛と息苦しさから意識を失います。あるいは血管が詰まらなくても、炎症を起こした肺の毛細血管から滲出液がにじみ出て、肺の中はまるで溺れたように水がたまっていきます。だから、ひどい呼吸困難と息苦しさを訴える。血管レベルで大ダメージを負うと、人工肺や人工心肺を装着して肺を休める必要があるのです」(大学病院教授)
こうした症状が出るのは肺に限らない。この教授はさらに、実際の患者のケースについて話し始めた。
「海外の論文を読み、新型コロナが血管の炎症を起こすウイルスだったらやっかいだなと思っていたのですが、不安は現実のものとなりました。中には腎臓の毛細血管が炎症を起こし、腎不全に陥った患者さんもいます。もともと腎臓が弱くて治療中でしたが、急激に腎機能が低下したため調べてみたところ、新型コロナに感染していました」
新型コロナウイルスは尿や便からも検出され、
「新型コロナに感染して、運悪く腎臓の毛細血管が炎症を起こせば、それまで健康だった人でも人工透析が必要になります。さらに糖尿病の治療中、あるいは血糖値が高いと指摘されている人は、コロナに感染すると非常に重症化しやすい。今からでも遅くないので、食事内容を見直し、血糖値を上げないことが自衛策になります」(大学病院教授)
コロナで人工透析とは、予想だにしなかった結末である。