サヨナラ負け4度の佐々岡カープ、高卒2年目の投手に寄せる新守護神の期待

 佐々岡カープの救世主は、高卒2年目の下位指名投手かもしれない。

 ファーム公式戦はまだ10試合程度しか消化していないが(7月25日時点)、8試合に登板し、セーブポイントでウエスタンリーグのトップに君臨するのは広島の若手ピッチャーだ。

 広島一軍のクローザーといえば、新加入のスコットに任せて開幕戦を迎えたが、大炎上。次に移籍2年目の菊池保則が抜擢されたが、力不足が露呈。3人目の一岡竜司もクローザーに抜擢されて2試合目でサヨナラ負けを喫するなど、抑えが固定できない。28試合でサヨナラ負けが4度という目も当てられないありさまだ。

「クローザーの不振に泣かされているチームはほかにもあります。しかし、深刻度は広島ほどではありません。先発の野村祐輔か、九里亜蓮を配置換えする案もあったのですが、エースの大瀬良大地が故障し、先発陣を動かせなくなってしまいました」(スポーツ紙記者)

 昨秋、右ヒザにメスを入れた中崎翔太、登板過多のフランスアはまだ本調子ではない。

“クローザー不在”の穴を埋めてくれそうなのが、2018年ドラフト5位で三重県立菰野高から広島入りした田中法彦だ。同年のドラフト1位は小園海斗。同じ高卒ルーキーでも小園は即戦力で、田中は「ファームで時間をかけて育てる」という枠での獲得だった。しかし、こんな情報も聞かれた。

「一軍レベルに到達するまで4、5年かかると思われたんですが、いい意味で期待を裏切ってくれました。広島の新しい高卒投手の育成法が功を奏したのかもしれません」(球界関係者)

 近年、広島は高卒投手が伸び悩んでいる。そのことを踏まえて、高卒投手は「半年間、基礎体力作り」という方針に切り換えた。基礎体力作りとは、走り込みや筋トレのことだ。投球練習もあったが、ボールを握らせてもらえる日は、外野のポールとポールの間を走らされるノックか、牽制やピックオフなどの連携プレーばかりで、実戦登板が許されたのは昨年の7月以降だった。

 田中は1点差の9回マウンドに上がっても、動じない。自信に溢れた表情で“基礎体力作り”によってパワーアップした速球をテンポ良く投げ込んでいた。

「思い切って、田中を一軍に」

 そんな声も聞こえてきそうだ。走り込みや猛練習で鍛え上げるやり方は、70年代の第一期黄金時代を思い出させる。原点回帰の“広島スタイル”で成長した田中が、佐々岡カープを救うクローザー候補に名乗りをあげそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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