「闇市のババア」「オバマの犬」北朝鮮の“ビラ爆弾”は放送禁止レベルだった

 6月16日、北朝鮮は、南北歩み寄りの象徴のひとつであった北朝鮮開城市内の南北共同連絡事務所を爆破した(写真は「労働新聞」より)。その3日前に金正恩・朝鮮労働党委員長の妹である金与正朝鮮労働党第1副部長の爆破予告に基づいての“破壊行為”である。北朝鮮の朝鮮中央通信の報道によれば、爆破は、脱北者による北朝鮮を批判するビラに対する措置だという。爆破の原因となったこの批判ビラ、南北朝鮮の間では恒例のようにバラまき合い続けてきたシロモノ。過去のビラ合戦について、国際ジャーナリストに話を聞いた。

「南北の批判合戦に使われるアイテムとして、『中傷放送』とともにビラはかなり古典的なものです。古くは1972年の7・4南北共同声明にもビラ散布の中止がうたわれています。その後、1992年の合意書、2004年の合意書を経てビラ散布は減少に向かい、2000年代には散布の報告はありません。しかし、2011年の金正日死去、2012年4月の金正恩の国防委員会第一委員長選出によって南北の緊張が高まって以降、再発します。2012年に、北朝鮮側から飛んできた熱気球から撒かれた、韓国の与党や国防省を非難する手の平サイズのビラは、回収されただけでも約1万6千枚ありました。2016年初頭に北朝鮮側が撒いたビラは、朴槿恵大統領の写真と違法薬物中毒の“商売女”を合成したものや、朴大統領の顔が合成された犬がオバマ大統領に擦り寄るものなど、なかなか過激な内容でした」

 なおこの2016年には、韓国側からも大量のビラと激辛インスタント麺が入ったバルーンが飛ばされていたという。その一部が偏西風に乗って宮城県に不時着した際には、日本のメディアでも大きく取り上げられた。

「2018年に北朝鮮が撒いた、トランプ大統領が踏みつけられて血だらけになっている一コマ風刺漫画的なビラも印象的でした。また、ビラや北朝鮮のニュースの中で使われる、資本主義国家の施政者を揶揄するあだ名もかなりの過激度です。例えば、朴槿恵大統領は『尾っぽのない老いぼれの雌犬』、李明博大統領は『酢を盗み飲みしたようなしかめっ面のネズミ』、ヒラリー・クリントンは『闇市のババア』などです。さすがに国外ではあまり報道もされませんね。放送禁止レベルなんでしょうか(笑)。ちなみに近年の北朝鮮側のビラ散布に使われる機器は、気球に代わってドローンが主流のようです」(前出・ジャーナリスト)

 まさに“爆弾級”の誹謗中傷でお互いをののしるビラ合戦。その歴史は長く、南北統一への大きな障壁となっているのは事実のようだ。

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