イチローのメジャー始球式が「サイン盗み」騒動の不信感払拭になる!?

 シアトルマリナーズのペナントレース開幕戦(3月26日/現地時間)で、イチローが始球式を務めることが発表された。地元紙「シアトルPI」をはじめ各メディアは、これを朗報として伝え、ゴルフ専門誌までもがエールを送っているのだが、その中には「野球への信頼を回復してくれる」との気になる文言もあった。

 その文言は、いまだ余波が続いているアストロズの“サイン盗み事件”を指しているのは明白。イチローのクリーンなイメージが不信感を払拭するという期待からのものだが、始球式での起用について「引退会見での発言も大きかった」(米国人ライター)との見方もある。

 その発言とは、「頭を使わない野球」への指摘だ。

「イチローは、数字のみに特化し、データによる誤った解釈が蔓延しつつある近年のメジャーの事情を憂いていました。どの球団もそうですが、今は対戦チームの各バッターの打球速度を数値化し、“初速が100マイルの平均打率は5割4厘、90マイルの場合は2割5分”といったふうに、得点圏にいる走者が生還できる割合を出している。しかしイチローは、そのために打球を速くすることにしか目を向けない傾向に疑問を呈し、相手の守備陣形や状況に応じて、“どの方向に打球を飛ばすべきか”が重要だと考えているんです」(スポーツ紙記者)

 頭を使わず打球を速くする練習に特化する選手たち、データばかりを伝えるメディアに「馬鹿げている」と言い放ち、「野球って馬鹿じゃできないスポーツだから」と訴えていたイチロー。その引退会見で見せた野球観に、米国のファンは深く考えさせられたそうだ。

「数字に偏重し、誤ったデータの使い方をする延長線上に、アストロズのサイン盗みがあったと解釈されています。そうした意味で、イチローに託された始球式は非常に意味があることでしょうね」(前出・スポーツ紙記者)
 
 野球の奥深さを伝えたイチローの言葉は、米国のルール変更やデータ解析に追随する日本球界にもあてはまるだろう。

(スポーツライター・飯山満)

エンタメ