掛布 江夏さんが言う「落ちそうで落ちない紙飛行機」ですよね。ああいうボールを投げられるかどうか。スピンの効いたフワーッとしたボール。今の時代の投手はツーシームだとか動くボールを投げたがるけど、藤浪は特に基本的なフォーシームの、きれいな回転をキャッチボールから意識したほうがいい。
福本 昔ながらのトレーニングもバカにしたらアカン。亡くなったカネヤンも「まず走れ」言うてた。「フク、ボールは手で投げるんと違う、足で投げるんや。手はあとでついてくる。バットもそうやろ」と。バッターも力強く振るためには足が弱かったらアカン。だからまず走れ、やった。
掛布 野球は下半身でやらないといけないですから。
福本 それにしても阪神が日本一になったのは85年で、平成はなれずに終わった。令和の時代に勝つために必要なことは‥‥。
掛布 ドラフト上位の選手たちが打線で中心を打っているチームは強いと思うんです。その中にテスト生みたいな、私のようなのがいたり、フクさんみたいに下位からはい上がった選手がいれば。そういう意味では、ドラフト1位の高山と大山の責任は大きい。
福本 そこそこできると計算して、チームが変わっていくための中心選手としての期待を込めて獲ってるんやから。
掛布 他球団を見ても、坂本や岡本、山田や誠也も結局、みんなドラフト上位なんです。
福本 4位から下は、たまにポコンと出てくればいい。
掛布 坂井前オーナーと観戦していた時に、言われたことがあるんです。「掛布さん、見てごらん。巨人のスタメンは全部ドラ1なんですよ。阪神はドラフト1位が4人ともベンチにいますわ。鳥谷、伊藤隼太、大山、高山‥‥」と。
福本 強いチームは生え抜きのレギュラーがそろってるから。
掛布 近本（ドラ1）、高山（ドラ1）、大山（ドラ1）、北條（ドラ2）、梅野（ドラ4）。この5人の生え抜きでポジションを固められれば強いでしょ。金本が（広島から）FAで来た時も新しい風を阪神に吹き込んだけど、生え抜きの中に追いつけ追い越せという選手が出てこなかった。
福本 金本が来たからアカンわと、勝負する前に気持ちで負けてた。実際に力の差もありすぎたけど。
掛布 例えば巨人には丸が来たけど、主役にはならなかった。坂本もいるし、阿部もいたから。巨人の場合は球界を代表する選手が来ても、目立たない。もし阪神でさっき名前を挙げた5人がしっかりしていれば、鈴木誠也のような選手がFAで来ても大丈夫。でも今の状態で来たら王様になってしまう。それではいつまでたってもダメだと思うんです。
