現役名医5人が「診察のウラ」を懺悔公開(3)薬物治療に誘い込むトリック

C そうすると、健診を受けるのも考えものだと思われるでしょうが、現在の自分の体の状態を知っておくという意味では、健診にも一定の意味があります。ただ、懺悔の思いも込めてホンネを暴露すれば、町医者にとって健診はいわば「定置網」です。定置網に迷い込んだ魚=患者は絶対に逃がさない。ただし、料理の仕方にはちょっとした工夫が必要になります。例えば健診で血圧が高いと指摘された患者がやって来ても「明日から降圧薬を飲みましょう」とは言いません。いきなりでは患者にも大きな抵抗感がありますし、場合によっては驚いて逃げ出してしまうかもしれないからです。そこで、まずは「血圧と体重は正比例しますから、食事や運動など生活習慣の改善によって、体重を落とすことから始めましょう」と、やんわりアドバイスします。

─しかし、体重は簡単には落とせないですよね。

C 実はそこがキモ中のキモ。数カ月間、患者には定期的に通院してもらい、その間、検査や診察で稼ぎも出しながら、頃合いを見計らって「食事や運動だけで体重を落とすのは難しいようですね。このままだと動脈硬化がさらに進んで脳卒中、心臓疾患、腎臓疾患などの重大な病気につながっていきますから、降圧薬を飲んで血圧をコントロールしていきしましょう」と切り出すわけです。

─先ほどのコレステロールや中性脂肪などについても、手口は一緒ですか。

D 一緒です。あとは加齢や肥満などで上昇してくる血糖値もそうですね。治療の必要がある1型糖尿病は別として、大多数を占める2型糖尿病は成り行きに任せておくのがベスト。ところが、降下薬で血糖値を下げてしまうと死亡率が上がるというデータがあるにもかかわらず、「脳血管破裂や両足切断などという悲惨な事態になっても知りませんよ」などと脅して、患者を検査漬けから薬漬けにしていくわけです。

A その検査漬け、薬漬けには別の闇もあるからなぁ。健診とは違い、病名さえつけてしまえば検査には保険が適用され、患者の負担は1割、3割で済む。いや、検査については患者側にも問題があって、レントゲン検査もできないクリニックははやらない。そのため最近はCT検査を売りにするクリニックが増えているけど、CT検査装置の導入には目が飛び出るほどの莫大なカネがかかる。その結果、放射線被曝の危険性などそっちのけで、必要もないのに「とりあえずCT検査」に走るデタラメ開業医があとを絶たないというわけだ。

【出席者プロフィール】

A=国立大学医学部長経験者(消化器外科医)

B=公立総合病院診療科長(内科医)

C=総合内科クリニック院長(老年内科医)

D=私立医科大学附属病院副診療科長(内分泌内科医)

E=民間総合病院診療科長(循環器内科医)

司会=医療ジャーナリスト

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