現役名医5人が「診察のウラ」を懺悔公開(4)利権構造に飲み込まれる医師

B 検査は儲かりますよ。患者が窓口で負担する以外の医療費については後日、保険診療報酬として国から医療機関に支払われます。ただ、問診に対して支払われる報酬は微々たるもので、まともな診療をしていたら病院は潰れてしまう。特に高度で高額な医療とは無縁の内科開業医にとって、検査会社に外注する血液検査をはじめとする検査は貴重な収入源になってくるわけです。

─裏を返せば、先ほどのCT検査をはじめ、人工透析や胃・大腸内視鏡検査などに特化したクリニックは大儲けということですね。では、薬漬けの闇は?

A 血圧降下薬でもなんでもそうだが、既存薬の特許期間が切れると、すぐに安いジェネリック医薬品が出回ってしまう。そのため、薬屋は特許期間の終わりをニラみ、少しだけ成分を変えた新薬の認可を厚生労働省から取って、画期的な新薬とのフレコミで市場に出してくる。ところが、だ。新薬の効能が既存薬とさほど変わらず薬価だけが高いことは、例えば新しい高血圧治療薬のデータねつ造が発覚したディオバン事件を見ても明らかなんだよ。

─製薬業界、医療界、厚労省の「鉄のトライアングル」にガッチリと組み込まれた利権構造ですね。

D 糖尿病の治療薬を見ても、タダみたいに安い既存薬があるにもかかわらず、より薬価の高い新薬が次々と開発されてきました。余計な成分が入っていない既存薬が最も使いやすいことはわかっていても、医師は利権構造ムラの掟に従って、最新薬を患者に処方するのです。「最も新しいお薬」と言えば、患者も喜んで納得しますからね。

B 結局、今の医療は「健診→検査漬け→薬漬け」という巧妙な錬金術の流れに沿って「あえて病気と病人を作り出して金儲けをたくらむ医療」なのです。生活習慣病の元凶は肥満にあるとして「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」という概念をひねり出し、患者を治療に引きずり込んでいるのも錬金術のひとつ。ですが、基準より少し太っている人のほうがはるかに長生きすることは広く知られている医学的事実です。

C つけ加えると、これまでの話に登場した生活習慣病、国民病と言われる「ガン」も、年を取るにつれて顕在化してくる「老化病」。そして、医療で老化を防ぐことはできません。冒頭で話に出た血圧もそうですが、体が老いに順応していく自然の摂理に身を任せ、体の異変を伝える症状がないかぎり医療には近づかない、というのが最大の防衛策になるでしょうね。

─ところで、皆さんは健診を受けていますか。

A (C医師のみ首を横に振ったのを見て)健診の受診が義務づけられている勤務医は別として、開業医で律儀に健診を受けているという話はほとんど聞いたことがない。医者は健診にさほど意味のないことを身をもって知っているし、症状が出てから必要な検査をすればいいと思っているからね。昔から言うだろ、「医者の不養生」って。この言葉は有言不実行をからかった「坊主の不信心」とは、まったく意味が違うんだよ。

【出席者プロフィール】

A=国立大学医学部長経験者(消化器外科医)

B=公立総合病院診療科長(内科医)

C=総合内科クリニック院長(老年内科医)

D=私立医科大学附属病院副診療科長(内分泌内科医)

E=民間総合病院診療科長(循環器内科医)

司会=医療ジャーナリスト

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