ウクライナ論客が指南「無法国家はこうあしらえ」(2)中国は実利より価値観で動く

 だがグレンコ氏は、ロシアの力は今がピークで、今後は衰えていくはずとみる。

「だから、経済関係や政治問題、領土問題については本質的な交渉をせずに、例えば文化イベントとかアニメ、あとはコスプレなど、どうでもいいようなことで『日ロ友好』して(笑)、相手がつけいる口実を与えないようなつきあい方をすればいい。そして、自分の立場を明確にしておき、機会を待つ。それが今、日本ができる最善の対ロシア外交だと言っていいでしょう」

 さらに、ロシア以上に煩わしい相手が中国だ。

「ロシアの場合、プーチン(67)のあとに独裁者が現れたとしても、政権がうまくいくとは限らない。ところが、中国の場合は共産党体制が確立されているため、人間が代わっても体制は揺るがない。つまり、その分、つけいる隙が少ないということです」

 しかも、中国は日本やアメリカといった「実利」で動く国とは違い「価値観」で動くのだ。

「よく、国が貧乏だから国民は独裁を好む、あるいは凶暴になる。国が豊かになれば気持ちも穏やかになり戦争なんて起こらない、と思われますが、これは誤った考え方。彼らの持つ独裁的な権威主義や帝国主義といった価値観は、国がどんなに発展し、豊かになっても変わることはない。つまり、経済の発展や没落は関係ないんです。だから、そういう国とつきあう場合は、向こうはその価値観で動いているということを常に念頭に置いて行動しなければいけないということです」

 深入りせずに表面上でうまくつきあう一方、日本の軍事力を向上させることが無法国家に対抗するためには絶対に必要だという。

「冷戦時代に西ドイツやフランス、イタリアなどは隣国である東ドイツやルーマニア、さらにそのバックにいるソ連の脅威にさらされてきました。しかし、自分個人の全体主義体制維持のために、全ての労力や資源を費やし粛清を繰り返す今の北朝鮮は、それを超えるほど恐ろしい国家と言わざるをえない。加えて隣国には韓国や中国、ロシアがあり、そう考えると今、日本が置かれている現状は冷戦時代のヨーロッパよりひどいかもしれません。まずは、そんな国に囲まれているということをきちんと認識するべきです」

 平和ボケと言われて久しい日本だが、グレンコ氏の祖国であるウクライナも、その平和ボケが災いしてロシアに侵略され、多くの犠牲を払った。

「豊かな国民と強い軍隊こそ、強い国家の基礎になる。ですから、日本人が生き残る道は富国強兵しかないということです。極東にあり、4つの無法国家に囲まれている日本だからこそ、今はとにかく国力を上げることを考えるべきなんです」

 日本を取り巻く仁義なき戦いは、まだまだ続きそうだ。

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