京都で「ぶぶ漬けでもどうどすか」と聞かれたら、それは「早く帰れ」という意味だという。府外の人にはなかなか伝わりにくいが、そんな「いけず文化」も見直す時期に来てしまったのかもしれない。
周知のように、近年、京都を訪れるインバウンドは増加の一途をたどっており、古都の住環境に深刻な影を落としている。特に民家や商店の軒先に無断で腰を据え、大声で談笑し、飲食や喫煙を繰り返したうえ、空き缶や生ごみを放置して立ち去る事例が後を絶たない。こうしたオーバーツーリズムは、地域の生活文化と観光振興のバランスを崩し、住民のストレスを増大させている。最大の問題は「マナー意識の欠如」。地元住民の怒りはXの投稿を見れば一目瞭然だ。
《インバウンドってなぜすぐに地べたに座るんだろう》《ゴミ捨てする外国人から100倍くらい税金を割り増しで取ったほうがいい》
そんな京都では、新しいお土産として「裏がある京都人のいけずステッカー」が人気になっている。表面に上品な京言葉の「建前」が、裏面にストレートな「本音」がそれぞれ書かれた両面構造のステッカーだ。例えば、表に「小っちゃい郵便受けしかおへんですいまへん。おおきに、はばかりさん」とあるが、裏をめくると「しょーもないチラシいれんな。迷惑やねん」という本音が書かれているという具合だ。
実際、人が集まる場所では「暑いでっしゃろ~。暑いな~」と言いながら「打ち水」をしてインバウンドを追い払うようなシーンをよく目にするというが、そもそも外国人が京都の「いけず文化」を理解できるかどうかは疑わしい。
一方、世界遺産・白川郷で有名な岐阜県白川村では、昨年、日本初となるオーバーツーリズム対策総合サイトを公開した。3カ月先までの駐車場の混雑見込みを確認できる機能や、状況をリアルタイムに把握できるライブカメラを設置し、「ずらし観光」を推奨している。
悪化するばかりのオーバーツーリズムには、国や地方行政の早急な対策が求められている。
(ケン高田)