4年連続日本一に向け、“PLイズム”が導入される。
日本一に輝いた福岡ソフトバンクホークスが、東北楽天の監督を退任したばかりの平石洋介氏を1軍打撃コーチに招聘するという。平石氏は楽天から提案された「2軍統括」というポストを断っているが、監督退任時には「ずっと野球をやってきたので、携わりたい気持ちはある」と話していたので、交渉にはさほど時間が掛からないだろう。
「指揮官としての平石氏は今季、則本と岸の故障でWエースを長期にわたって欠いていたにも関わらず、チームをクライマックスシリーズに導いています。選手起用に長け、熱血的な指導でも知られています」(スポーツ紙記者)
現役時代、接点のなかったソフトバンクからのコーチ就任要請だが、橋渡し役を買って出たのは森浩之ヘッドコーチだという。森ヘッドコーチは平石氏のPL学園時代の先輩に当たる。
PLと聞いて真っ先に思い出されるのが、98年の夏の甲子園。松坂大輔擁する横浜高校と繰り広げた延長17回に及ぶ死闘だ。その死闘を演出したのが、三塁コーチャーズボックスに立っていた平石氏だった。
平石氏は瞬時に横浜バッテリーのクセを見抜き、徹底的に松坂を苦しめた。その後の守備体型でも指示を出しており、名将の誉れ高い横浜・渡辺元智監督(当時)をして、「こんなに野球を知り尽くした高校生がいたのか!?」と舌を巻かせたほどだ。
工藤公康監督が求めているのは熱血的な指導ではなく、そうした平石氏の緻密な野球理論なのかもしれない。
「PL学園は高校球界に一時代を築きましたが、全体練習の時間は公立高校と変わりません。夕食後の自主練習で『差』が付くんです。指導者も練習内容をことさら指示せず、球児が自分で考えることを尊重していました」(アマチュア野球担当記者)
育成枠から這い上がってきた選手の多いソフトバンクにとって、PL出身の平石氏は最適な指導者とも言える。ソフトバンクは豪快さと選手層の厚さがウリだが、来季は緻密な野球スタイルも見られそうだ。
(スポーツライター・飯山満)