プーチンの悲願 北海道―サハリンを結ぶ「宗谷海峡大橋計画」

 今から113年前、東京・新橋とドイツ・ベルリンを結ぶ「欧亜国際連絡列車」の切符が発売された。敦賀―ウラジオストクは船で移動し、そこからはシベリア鉄道でロシアを横断するというもので、1世紀も前に移動ルートとして確立していたとは驚く限りだ。

 だが、ロシア政府はこれをさらにスケールアップさせた「ユーラシア大陸横断鉄道計画」を構想。サハリンと北海道の稚内、ロシア本土に海底トンネル、または橋で繋ぎ、東京とロンドンを鉄道で結ぶという壮大な計画だ。

 実際にロシア極東開発省は、2016年からサハリン―ロシア本土の橋を建設することを発表している。また、同年にロシア運輸省は、稚内―サハリン間の宗谷海峡(間宮海峡)のルートについて日本側と協議を行うとメディアで報じられている。

 プーチン大統領も17年に開かれた「東方経済フォーラム」の中でこの構想に触れているが、25年2月現在、まったく進展しておらず白紙同然の状態だ。

「最大の理由はカネの問題です。完成すれば人類史に残る大事業になりますが、財政的な負担はあまりに大きい。ロシア政府内でウクライナへの軍事侵攻計画がより現実的な話となり、戦費確保のために保留になったと思われます」(ロシア事情に詳しい全国紙記者)

 ただし中止になったわけではなく、ロシアのアレクセイ・チェクンコフ極東開発相は、昨年6月に開かれたサンクトペテルブルク経済フォーラムの中で、「長期的視点に立って計画を進めている」と自国メディアの取材の中でコメント。さらにサハリンとロシア本土の橋の建設着工は、「早くても30年以降」との見方を示している。

 しかし日本はウクライナを支援しており、停戦しなければ協議は無理だろう。技術的には宗谷海峡に橋と海底トンネルのいずれも建設可能だが、費用が抑えられるのは橋。それでも莫大な費用がかかるため、スムーズに合意に達するとも思えない。

「しかも日本側にとっては、北方領土問題を棚に上げて話を進めるのは難しい。プーチン氏の存命中の実現はほぼ不可能な状況ですが、彼にとっては悲願とも言われています。そのため、停戦後に大きな進展があるかもしれません」(同)

 鉄道で海外と行き来できるのは魅力的だが、問題は山積みだ。

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