僕たちは「被害者芸人」(2)空気階段もぐらが激白「すた丼」置き引き事件「オッサンの言い訳に絶句」

 21年のキングオブコントのチャンピオンながら、最高額900万円の借金を抱えることで、クズ芸人の名をほしいままにしているのが空気階段・鈴木もぐら(37)。愛してやまない芸人の街・高円寺(東京)での被害の一夜を激白する。

「脂っこいものが好きなんですけど、その油をビールの炭酸と苦味で洗い流す。洗い流したところで、またから揚げと豚バラの油をぶち込む。これがたまらないんです」

 と、目を輝かせるもぐらにとって、「すた丼」とビールは、疲れた自分を癒やす定番のご褒美なのだという。ちなみにすた丼とは、秘伝のニンニク醤油ダレを絡めた豚バラ肉を炒め、大盛りご飯の上にのせた丼物だ。

 時刻は夜9時頃。酒のつまみのすた丼とから揚げをテイクアウト。晩酌用のビールを求め、駅前のスーパーに寄った時のことだったという。

 レジ近くに設置された袋詰めをする作業台にご褒美であるすた丼を置き、ビールの会計を終えると、真後ろにあるはずのすた丼が蒸発していた。ここですぐには置き引きだとは思わなかったが、なぜ突然消えたのか。

「ここに絶対置いたよなっていう。から揚げまでつけたのに、何でないんだと。もしかしたら店内のどっかに落としたのかなと思って」

 もぐらは買い物をした動線を逆走しながら捜査を開始。すると、前方から片手にビール、もう一方にすた丼をぶら下げたオジサンが歩いてくるではないか。そのいでたちは、ワークキャップ、Tシャツという作業着姿で、

「パッと見てすごく怪しいっていう感じじゃなく、普通の仕事帰りというか、競艇場とかにいそうな感じのオジサンだったんです」

 オジサンは、盗んだらすぐに逃げるでもなく、ビールの会計を済ませようとしていた。「絶対あれは俺のだな」と思い、恐る恐る声をかけた。

「すみません。それ、俺のすた丼じゃないですか。あそこに置いてあった俺のすた丼ですよね‥‥」

 するとオジサンの第一声は「焦ったー!」だった。いきなり声をかけられて、びっくりしたのかなと思いきや、オジサンいわく「いやぁ、あんなところにすた丼が置いてあるから焦ったよ。置いてあると本当に焦るよな」などと、とんちんかんな言い訳でお茶を濁す始末だったという。

 この迷惑オジサンの放言にさしものもぐらも「焦った?」と聞き返すのがやっとだった。

「オジサンから『すいません』とか、反対に『俺のだよ』『証拠あんのかよ』という逆ギレの答えをイメージしてたんだけど、予想外の返答にツッコミができませんでしたよ」

 結局、もぐらと対峙した置き引き犯は逆ギレすることもなく、置き引きをまるですた丼と自分だけの出会いにすり替え、「焦った~!」を連呼。ビール2缶とすた丼をレジに置き、手ぶらで夜の街に消えていったという。

「スーパーの人からしても『あれ? 買わないの?』って感じだったでしょうね。今後、テレビでオレが『焦った~!』とボケたら、置き引き犯の言葉を使ったと思ってください!」

 その後、高円寺の街で置き引き犯を見かけることはなくなった、のであればいいのだが‥‥。

(つづく)

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