不動産神話が消え去り、少子高齢化が加速、失業率が例を見ないほど悪化。閉塞感ただよう中国が春節(1月28日)を迎える。どんな年になるのだろうか。
中国の現状を絵に例えれば、経済力世界第2位の巨象がバブル破綻という深手を負い「のたうち回っている」ようなものだ。中国政府は強気を装っているが、内実は国の存続を揺るがすほど深刻である。
さらに痛いのは、不況がいつ底を打つのか見えない中で、トランプ次期米大統領が就任前に、対米輸出国に対し大幅な関税引き上げを宣言していることだ。
カナダ、メキシコからの全輸入品に一律25%、すでに最大で50%の関税品目がある中国からの輸入品には、さらに追加で10%上乗せする(最大60%)としている。
これが実施されれば、外需頼みの中国はダメージが計り知れない。経済衰退にあえぐ習近平政府にとってじつに厳しい試練となる。
しかも、トランプ氏は国務長官に反中国の急先鋒であるマルコ・ルビオ上院議員を指名したうえ、政権幹部に対中タカ派を次々に指名している。
つまり、2025年の中国は貿易だけでなく、外交・軍事面でも大逆風が吹く状況にあるのだ。この流れは、中国が誇る社会主義市場経済に劇的な変化をもたらすことになるかもしれない。
市場経済と言っても、実態は共産党がコントロールする異形の経済だ。たとえば、経済の要である金融機関は国家資本が大半を占める、いわば共産党直結企業。また、エネルギー、通信、運輸、資源など基盤産業を押さえているのも、少数の国営企業だ。
一方で、庶民の生活に直結するサービス業、流通などは民間企業で、これが大きな雇用の受け皿となっている。ところが政府による規制強化や、3年間に及んだコロナ禍で中小の民営会社が立て続けに倒産。4000万人余の失業者を生んだと言われている。
本来、こうした企業を支援するはずの銀行は、党のコントロール下にある。中国政府はバブルが破綻しても、国有企業を守ることしか考えない。例えば、不動産バブル破綻で傷付いた鉄鋼、セメント、ガラスなどの大企業は支援するが、国有企業なので雇用創出にはつながらない。失業率は上がり、家計所得は落ち込み、消費は冷え込むいっぽうなのだ。
長期化する不況に習近平批判も出始めた。14億国民の不安は膨らんでいる。中国政府はこれまでのように国民の不満を力で押さえるのか、共産党が自ら改革できるのか、見ものである。
(団勇人・ジャーナリスト)