現代社会を円滑に生きるために必要不可欠なスマートフォン。メッセージのやり取り、写真や動画の記録、インターネットなど、片手に収まる小型の液晶画面に夢中になるのはシニア世代も例外ではないだろう。しかし、利便性の裏に隠れた”悪魔の代償”を無視してはならない。知らず知らずのうちに心や体を蝕んでいるのだから‥‥。
「1日のうちに4時間以上スマホを使用している人は依存症の可能性が高い。少しずつでもスマホから離れる努力をしないと、取り返しがつかないことになりますよ」
こう警鐘を鳴らすのは「本当にこわい!スマートフォン族の病気」(KKロングセラーズ)を著書に持つ「浅川クリニック」の浅川雅晴院長だ。無意識のうちに欲求をコントロールできなくなる状態を「依存症」という。スマートフォンにおいても同様の症状に悩まされるケースは少なくない。
「スマホを気にしてしまう理由の1つが『承認欲求』でしょう。人間には誰しも他人から認められたい、評価されたい心理があるもの。食事や仲間との団らん風景などを写真や動画に収め、SNSに投稿して『いいね』やコメントをもらえると承認欲求が満たされます。他人から好意的なリアクションがあると気分が高揚するのは、若者だけではないのです」
とかく高齢になればなるほど、連れ合いや友人との別れは避けられない。さらには、コロナ禍がシニア世代の孤独に拍車をかけている。
「感染症を恐れて寄合いが減少。かつては碁会所や体操教室で、子供や孫の自慢話に花を咲かせることができました。ところが一度出不精になってしまうと、なかなか外出は億劫になる。そうなると他人とスマホなしでつながりを保つのが難しくなるのです」
もっとも、朝起きて夜寝るまでスマホを手放せない生活が続けば、体のアチコチに変調が現れるようになる。
「首や肩が凝るようになります。スマホの画面を見る姿勢のほとんどが前屈みだと思います。長時間続けることで、脊椎の脇にある交感神経と副交感神経に悪影響を及ぼします。すると首や肩の筋肉が凝り固まってしまう。ひいては血流が悪くなり、頭痛や頭がぼーっとしてしまう原因にもなります」
スマホから発光される「ブルーライト」によるダメージも見逃せない。
「朝の陽ざしにも含まれるブルーライトは、体内時計を整えるなど健康維持に非常に有効。ただし、それを夜中に浴びると逆効果です。交感神経が優位になることで、寝入りが悪くなったり眠りが浅くなったりと睡眠の質がガクッと下がります。また、長時間浴びると眼球にも多大なストレス。眼精疲労や老眼を早めることになりかねません。特にシニア世代はすでに老眼なので、目を凝らしてスマホの画面を見がち。当然ながら、眼球への負担はより大きくなります」
目が疲れているのに眠れない─。そんな夜に悩む前に、寝室からスマホを遠ざけよう。
【「スマホ依存症」チェックシート⑩】
①1日に4時間以上スマホを使用している(仕事を含めて)
②就寝前に電気を消してもスマホをチェックしてしまう
③ガラケー時代よりも使用時間が長くなった気がする
④バイブレーション機能が作動したように錯覚することが多い(幻想振動症候群)
⑤ついスマホの画面を見ながら他人と会話をしてしまう
⑥世間話がてら得意げに話していたことを「陰謀論だ」と言われる
⑦物忘れあるいは車の運転中のヒヤリハットが増えた
⑧直接人に会うのが億劫になった
⑨SNSに写真や動画を投稿する習慣がある
⑩首や肩が凝って仕方がない
0~3項目:依存していない
4~5項目:やや依存している
6~7項目:依存している
8~10項目:かなり依存している
(つづく)