【北朝鮮】金正恩が自ら運転で送迎…ロシア前国防相・ショイグ氏を異例のおもてなしで得た“見返り”

 ロシアのプーチン大統領の右腕とされるショイグ安全保障会議書記が、北朝鮮の「戦勝節」を祝うためロシア軍事代表団を率いて訪朝。初めて金正恩総書記と会談したのは、同氏がまだ国防相だった昨年7月のことだ。この時には2泊3日という比較的ゆったりとした日程が組まれていたが、9月13日、再び北朝鮮を訪れたショイグ氏は、到着後すぐに正恩氏と会談。その後、日帰りで帰国するショイグ氏を助手席に乗せ、正恩氏が自らベンツのハンドルを握り平壌空港まで送迎したことが報じられ、このあまりにも慌ただしい会談の中身について様々な憶測が広がっている。

「ショイグ氏の訪朝を受け、翌14日の朝鮮中央通信は、『両国が戦略対話を深め続け、互いの安全利益を守るための協力を強めることで一致した』と報じたものの、具体的内容についての発表はありませんでした。ただ、2人の会談は到着時と出発時の2度行われたとされ、これまで海外の要人を自ら運転する車で送迎することなどなかった正恩氏がそうしたことで、今回のショイグ氏訪朝が極めて重要な意味を持っていたことが窺い知れます」(国際部記者)

 では、いったい両者の間で何が話し合われたのか。その謎を解くカギが、おそらくはここ数週間のウクライナにおける戦況の変化ではないか、と言うのは軍事ジャーナリストだ。

「周知のように現在、ウクライナ軍はロシア西部で大規模な越境攻撃を行っており、ロシア軍の補給ルートとなっている橋が次々と破壊されています。これに対しロシア軍は部隊を増強するなどして反撃にあたっているものの、イギリス国防省が発表した戦況分析によればウクライナがやや有利という指摘もある。そんな中、北大西洋条約機構(NATO)に所属する国々がウクライナに提供した巡航ミサイル『ストームシャドー』や長距離兵器でロシア本土攻撃をいよいよ米国が許可するのではないかとの噂が流れた。むろん、プーチン氏は西側を威嚇する発言をしていますが、内心、相当イラついていることは間違いない。そこで今回のショイグ訪朝で、6月にプーチン氏、正恩氏が結んだ『露朝包括的戦略パートナーシップ』を再確認し、北朝鮮からの武器弾薬の追加支援に加え人員的な『援軍』要請をした可能性もある。北朝鮮は過去にも、ベトナム戦争やシリア内戦などで援軍を出したことがあることから、可能性としては十分ある話だと思いますね」

 韓国の情報筋によれば、これまで北朝鮮はロシアに対し北朝鮮版「イスカンデル」と呼ばれる射程600kmという戦術誘導ミサイル「KN-23」などを供給。さらに今後は、短距離弾道ミサイル並みの破壊力を持つ、射程約400kmの600mm砲多連装ロケットを供与する可能性があるとの情報もある。

「もちろん北朝鮮はその見返りとして、莫大な外貨とロシアの最新宇宙開発技術を手に入れることができるわけですから、ウィンウィン以上でしょう。つまりは、今回のジェイグ氏との会談で、それが具体的に締結した…。正恩氏運転による空港までの送迎という異例の厚遇には、そんな要因があったのではないでしょうか」

 ロシアとの関係が深まれば深まるだけ、逆に中国との関係には距離ができる北朝鮮。そんな背景もあるのか、近年は朝中間の貿易額は減少傾向にあり、今年8月に中国海関総署が公開した「貿易現況資料」によれば、7月の朝中貿易額は1億4475万ドル(約205億円)。これは前月(1億7845万ドル)比で18.8%の減少で、中朝貿易は5月以降、3カ月連続で減少傾向にあるという。北朝鮮が最大の貿易国である中国からいきなりロシアに乗り換えることは考えられないものの、口うるさい中国への依存から脱却したいという思いがあっても不思議ではない。北朝鮮、ロシア両国の蜜月関係はさらに深まっていくことは必然的なようだ。

(灯倫太郎)

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