ウクライナに対抗したロシアによるウクライナ各地へのドローン攻撃が続く中、その影響はウクライナと国境を接するNATO加盟国にも飛び火し緊張が拡大している。
ラトビアのリンケービッチ大統領は9月8日、ロシアのドローンがロシア同盟国ベラルーシからラトビア上空に侵入し、ラトビア・ロシア国境から西に55キロに位置するレーゼクネという街に墜落したと発表した。その後、ラトビア政府はロシアの代理公使を呼び出して厳重に抗議し、国土防衛を強化する方針を明らかにしている。
また7日には、こちらもロシアが発射したドローンがルーマニア領空も侵犯し、ルーマニア政府はウクライナとの国境に近い地域の住民に対して注意を促したうえで、戦闘機2機をスクランブル発進。その国境付近では、ウクライナ南部の湾岸都市イズマイルに向けて発射されたロシア産ドローンの破片が見つかっている。
しかし、こうしたロシアの行為は以前から発生している。ウクライナとドナウ川を介して対岸に位置する東部トゥルチャ県では昨年9月、ロシア製ドローンの破片が発見され、ルーマニア防衛省は警戒を強めている。トゥルチャ県の村々ではドローンの破片から身を守るため、ルーマニア防衛省が地上に建設したシェルターが地元住民に提供されている。
このように、ロシアによるドローン攻撃の影響はウクライナの隣国にも飛び火している。しかも、ラトビアもルーマニアもNATO加盟国であり、両国への具体的な軍事攻撃はNATO条約第5条によって全加盟国への攻撃とみなされ、ロシアは集団的な制裁に遭うことになる。
ウクライナがロシアによる侵攻を許した背景の1つに、ウクライナがNATOに加盟していないことがあるが、要はプーチン大統領からするとルーマニアやラトビアへの攻撃は極めて難しいということ。しかし、意図的に両国を攻撃することはできなくても、ラトビアはウクライナと共に旧ソ連諸国。プーチン大統領としては西側同盟に加わったラトビアに対する不満も根強く、ドローンによって間接的に牽制する狙いもあるのだろう。
(北島豊)